沖縄県に多発する難病である沖縄型神経原性筋萎縮症(HMSN-P)については、遺伝子座を同定し、候補領域を3番染色体の2メガベースに縮め、同領域の配列を決定し、TRK-fused gene(TF6)に原因を同定した。他グループからも、3番染色体長腕の同じ候補領域に同様の変異が確認され、この遺伝子が疾患の原因と考えられた。 都城地域に多発する進行性若年性の認知症については、1997年にその家系の臨床像の特徴を報告し注目を浴びた。Autosomal dominant Leukoencephalopathy with spheloid bodies(ADLES)と命名したが、2011年にメイヨー大学により、HDLS (hereditary diffuse leukoencephalopathy with speroid)の原因遺伝子CSFR1が発見され、我々が報告した症例にもCSFR1にミスセンス変異を認め、同病と確認した。ただし発症機序に関しては不明であり、病理所見と合わせて検討を続けている。 16q-ADCA(SCA31)については、リピートの挿入変異が原因として報告されたため、 Purtrophin変異陽性の症例について、南九州地域においても、2.5-3.1Kのリピートの挿入変異を確認した。南九州地域ではリピートの長さと発症年齢や病状には相関はなかったこと、優性遺伝性小脳失調症の1家系で16q-ADCAに多くみられるSNPsを持つものの2.5-3Kのリピートの挿入変異を持たない家系を認めた。その家系は原因として報告されたペンタヌクレオチドリピートを持たず、異なるペンタヌクレオチドリピートとさらに長いものを持つことを確認した。発症機序はリピートの転写産物によるRNA-gain of functionメカニズムが提唱されているが、更に複雑な経路も存在する可能性も考えられた。
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