従来多発性硬化症(MS)の一亜型であると考えられてきた視神経脊髄炎(NMO)は、患者血清中に特異的に存在する自己抗体(NMO抗体)の標的がアクアポリン4(AQP4)であることが明らかになって以来、MSとは異なる疾患であると理解されるようになってきた。本研究では以下の2通りの方法で、MSモデルとは一線を画したNMOモデルマウスを確立し、これを解析することでNMOの発症機序の解明、更には治療法の開発を目指している。 【I】AQP4完全ノックアウトマウスを用いたNMOモデル NMO-IgGがAQP4に結合することが、NMO発症のきっかけになるのかどうかを検討するため、NMO-IgG様の性質を有するモノクローナル抗AQP4細胞外ドメイン抗体の作製を試みた。ヒトAQP4もしくはマウスAQP4を安定に発現するCHO細胞株を用いて抗体の結合能に関する評価を行った結果、マウスAQP4の細胞外ドメインを認識する抗体を2クローン得る事ができた。これらの抗体を血中あるいは髄液中に投与することで、抗AQP4抗体がNMO発症の引き金となるか否かを検証することが可能となった。 【II】AQP4-M1アイソフォーム特異的ノックアウトマウスを用いたNMOモデル 先天的にはnullであるが、後天的にAQP4を誘導できるマウスを作製するため、Cre-ER^<T2>をアストロサイトで特異的に発現するトランスジェニックマウスの作製に着手した。このトランスジーンを作製する過程で、AQP4遺伝子のプロモーター領域の詳細な解析を行い、アストロサイト特異的発現に関与するシスエレメントを複数同定した。これらを含む遺伝子断片は初代培養アストロサイトにおいて特異的にリポーター遺伝子の発現を誘導したため、この断片をトランスジーンのプロモーターとすることとした。
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