従来多発性硬化症(MS)の一亜型であると考えられてきた視神経脊髄炎(NMO)は、患者血清中に特異的に存在する自己抗体(NMO抗体)の標的がアクアポリン4(AQP4)であることが明らかになって以来、MSとは異なる疾患であると理解されるようになってきた。本研究では以下の2通りの方法で、MSモデルとは一線を画したNMOモデルマウスを確立し、これを解析することでNMOの発症機序の解明、更には治療法の開発を目指している。 【I】AQP4完全ノックアウトマウスを用いたNMOモデル 昨年度バキュロウイルスディスプレイ法により得た9クローンのうち、(1) M1及びM23ともに結合できるクローン、すなわち抗体の認識にAQP4のアレイ構造形成を必要としないクローンと、(2)M23にのみ結合できるクローン、すなわち抗体の認識にAQP4のアレイ構造形成を必要とするクローンの、いずれも補体活性化能のある2クローンを選択した。初代培養アストロサイトを用いた系により、両クローンとも24時間のインキュベーションにより、M23アイソフォームのエンドサイトーシスとライソゾームでの分解を促進した。各アイソフォームを安定発現したCHO細胞を用いて同様の検討を行ったところ、(1)のクローンはM1アイソフォームについてもエンドサイトーシスとライソゾームでの分解を促進した。(1)のクローンを野生型マウスの血中に投与したが、リポ多糖の投与を組み合わせても顕著な症状は見られなかった。また、中枢神経系においては抗体の沈着等も見られなかった。しかしながら、腎臓においては投与後1週間以上経過しても抗体の結合が認められた。 【II】AQP4-M1アイソフォーム特異的ノックアウトマウスを用いたNMOモデル 昨年度同様MerCreMerをアストロサイトで特異的に発現するトランスジェニックマウスの確立が達成できなかった。
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