研究概要 |
平成22年度に、GFP発現ラット(系統:SD,日本SLC)にHTLV-1を感染させ、脂肪組織から体性幹細胞(GFP陽性)を分離し、HTLV-1非感染GFP陰性ラットに移植した。今年度は、そのラットを感染後12ヶ月後に解剖し、肉眼的には明らかなGFP陽性細胞由来の腫瘍性病変の発生は認められなかった。移植されたHTLV-1非感染GFP陰性ラットにおけるGFP陽性細胞の有無について、各臓器でのPCRおよび組織学的な検討を実施している。また、平成22年度にHAMモデルラットを従来の方法(Am J Pathol 2006)で作製したが、発症に約2年を要し、発症率も低かったため、新規のHAMモデルラット作製の試みとして、HTLV-1感染細胞を2週間毎に投与することによって、発症率の向上と発症期間の短縮が得られないかを検討する実験に着手した。さらに、生命倫理委員会の承認を得た植うえで、ヒト脂肪組織から体性幹細胞(ASC)を分離して、HTLV-1受容体であるglucose transporter-1(Glut-1)(Manel N.et al,Cell 2003),heparan sulfate proteoglycans(HSPGs)(Jones KS et al.J Virol 2005),neuropilin-1(Ghez D et al,J Virol 2006)の細胞表面における発現レベルを、他の付着細胞株(HEK293)におけるこれらの分子の発現レベルと、フローサイトメトリー法にて比較解析したところ、Glut-1の発現レベルがやや低い結果が得られた。また、ASCのHTLV-1感染に対する感受性について解析する為に、in vitroでの感染実験系を確立した。HTLV-1関連脊髄症(HAM)患者由来の感染T細胞株培養上清の濃縮液を用いると、in vitroで感染が成立することを明らかにした。本実験系を用いて、ヒト由来のPBMC、Jurkat細胞株とASCのHTLV-1感染に対する感受性を比較したところ、ヒトASCに対するHTLV-1感染感受性は他の細胞群と比較して有意な差は認められなかった。現在、症例数を増やして検討を進めており、また、細胞分化誘導によるHTLV-1感染感受性の変化についても検討を進めている。
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