研究課題/領域番号 |
22590945
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
武藤 多津郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60190857)
|
研究分担者 |
澤田 誠 名古屋大学, 医学部, 教授 (10187297)
|
キーワード | GlcCer / GlcT-1 / β-glucosidase / microglia / cytokine / neurotrophin / real time PCR / neutral glycosphingolipid |
研究概要 |
これまでの検討から、神経保護的ミクログリアと神経障害的なそれの大きな差異に中性糖脂質及び酸性糖脂質の濃度がある事が判明している。そこで、神経保護的ミクログリアで神経障害的ミクログリアよりその細胞内含量が著明に多いグルコシルセラミド(GlcCer)の合成酵素のグルコシルセラミド合成酵素(GlcT-1)蛋白量をWesterm blot法で比較すると神経保護的ミグログリアでは有意に蛋白量が多いことを見出した。さらに、GlcCerの分解酵素であるβ-glucosidase活性を測定したところ両者には差がないことが判明した。こうした検討から、神経障害的ミクログリアではGlcCerを含む中性糖脂質生合成代謝が何らかの理由で神経保護的なそれより有意に低下している実態が確認できた。そこで、こうした脂質組成の違いが機能の違いと密接に関連しているのか?あるいはただ偶然に組成が違うだけなのかは本細胞のin vivoでの機能を考えるうえで極めて重要な問題と考えて、次の実験を行った。まず、神経障害的ミグログリアの培養系にGlcCerを投与し、overnightで培養し、その細胞と未処理の細胞を用いてLPS,interferon γで一定時間刺激し、細胞からmRNAを抽出して、炎症性サイトカイン、神経栄養因子の発現をreal time PCR法で解析した。その結果、中性糖脂質を投与したミクログリアのこれら因子の発現の発現プロファイルは神経保護的なcell lineと同様な傾向を示すことが明らかとなった。つまり、これら脂質の相違は機能の相違とよく相関することが示唆された。したがって、実際のヒト脳標本でそこに存在するミクログリアが如何なる作用を及ぼしているかは、脂質組成を調べれば推定できることを意味する。残念ながら、当該年度に実際のヒト標本を用いてその検討はできなかったが、次年度にはその検討を詳細に行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響で、保存している細胞の状態が思わぬ悪い影響を受けている事が判明した。そのため、神経保護的ミクログリアと神経障害的ミクログリアの回復に予想以上の時間をとられてしまった。ようやく、そのリカバリが出来、後半実験が軌道にのった。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度の予定していた実際の神経疾患患者での検討が出来なかったので、次年度にその検討を急ぐ。各種神経疾患患者剖検脳標本は既に当該研究室に所蔵しており迅速な検討が行える予定である。
|