研究課題/領域番号 |
22590956
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
椎野 顯彦 滋賀医科大学, MR医学総合研究センター (50215935)
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研究分担者 |
犬伏 俊郎 滋賀医科大学, MR医学総合研究センター, 教授 (20213142)
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キーワード | アルツハイマー病 / ミトコンドリア / アミロイドβ / 磁気共鳴 / ダイナミン様蛋白 / 一酸化窒素 / 酸化ストレス / 軸索障害 |
研究概要 |
ダイナミン様蛋白質であるDRP1のS一ニトロシル化が生体内においてもミトコンドリアの過剰な分裂を引き起こすか否か、それによる樹状突起や神経細胞本体、周囲グリア(アストロサイト、オリゴデンドロサイト)にどのような変化が生じるかを観察することにより、アルツハイマー病の原因、治療法を模索す目的のために、B6;129-Psenl^<tmlMpm>Tg (APPSwe, tauP301L) 1Lfa/Jを用いた。ELISA法によるアミロイドβ(Aβ1-42)、タウタンパク、リン酸化タンパクの測定、MRIによる軸索輸送の計測、MRSによる脳の生化学的変化測定を行っている。Mgを用いた軸索輸送の計測では、Tgマウスは野生型と比べて軸索輸送に問題のあることが判明した。次に大脳皮質に定位的にglyceryl trinitrate (GTN)を投与するとダイナミン様GTPase(DRP1)のS一ニトロシル化が起きることを確認した。Western blotによりこの反応は容量依存性に増加すること、Tgマウスに比べ野生型(Wt)のマウスではこの変化が少ないことから、Aβがこの反応を増強している可能性が示唆された。さらに、WtマウスよりもTgマウスにおいて3-nitrotyrosineの量が増加していることが判明した。これは、GTN投与後のNO産生がTgマウスにおいて亢進していることを示唆する結果であった。次に神経細胞内ミトコンドリアを形態学的に観察すると、Tgマウスにおいて小型のミトコンドリアが多数認められた。しかしながら、Tgマウス、WtマウスともにGTN投与周辺の神経細胞のミトコンドリアの形状にあまり変化はなく、GTNによるミトコンドリアの分裂を証明するには至らなかった。GTNはミトコンドリアのaldehyde dehydrogenaseを介してNOを発生させると考えられている。そこでミトコンドリアを介さないNOドナーを用いたときのTgとWtマウスの比較をすることにより、TgマウスにおけるNOの作用増強にミトコンドリアが関与しているかどうかを明らかにする必要があると考えている。また、Aβの存在がどのような機序でDRP1のS-ニトロシル化を促進するのかを調べる必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NO負荷がDRP1のS-ニトロシル化を引き起こすこと、この現象はアミロイドβ存在下で促進されることを明らかにできた
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DRP1のS-ニトロシル化が神経細胞の変性に寄与するかどうか、寄与するとしてその機序はどうか、治療法はないか、を検討する。
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