研究概要 |
[研究の目的と意義] 新たな脳梗塞急性期治療戦略として2010年に血栓回収デバイス(Merci)による血行再建療法が加わったが、専門医によるカテーテル手技が必要であるためランダム化比較試験によって有効性を証明することは難しい。そこで本研究では脳血流SPECT所見から算出した予測病巣体積と最終病巣体積の比較による客観的な有効性評価システムを構築することを目的とした。 [平成22年度の実績] 発症6時間以内の急性期脳梗塞10例(男性5名,年齢70±9歳,NIHSS中央値13,全例rt-PA適応外,うち4例が血行再建施行)を対象として、既報告[Hirano T.Cerebrovasc Dis 2001]の脳血流閾値(対側比<64%)の妥当性を病型ごとに検証した。保存的に加療した場合、塞栓性梗塞5例では正確な病巣予測が可能であった(予測34.5±4.0→最終39.4±32.2cm^3)が、アテローム血栓性脳梗塞1例では過小評価(27.9→43.6cm^3)された。血行再建を行った4例では、最終病巣体積はいずれも予測病巣体積を下回り(102.7±100.0→40.8±18.3cm^3)、病巣縮小率が大きいほど臨床転帰(3ヵ月mRS)も良好であった(88%→mRSO,83%→mRSO,78%→mRS1,28%→mRS3)。 [平成23年度以降の計画] より精度の高い脳血流閾値を求めるため症例の蓄積を進める。同時にMerciデバイスの有効性についても検証を試みる。
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