研究概要 |
[研究の目的と意義] 新たな脳梗塞急性期治療戦略として血栓回収デバイス(2010年Merci、2011年Penumbra)による血行再建療法が加わったが、専門医によるカテーテル手技が必要であるためランダム化比較試験によって有効性を証明することは難しい。そこで本研究では脳血流SPECT所見から算出した予測病巣体積と最終病巣体積の比較による客観的な有効性評価システムを構築することを目的とした。 [平成23年度の実績] 発症6時間以内の急性期脳梗塞21例(男性10名,年齢74±10歳,NIHSS中央値19,うち6例で血行再建施行)を対象として、既報告[Hirano T.Cerebrovasc Dis 2001]の脳血流閾値(対側比<64%)の妥当性を検証した。保存的に加療した15例では予測病巣体積(35.6±22.4cm^3)より最終梗塞体積が上回った(56.1±47.8cm^3)。一方、血行再建を施行した6例(t-PA 2例、血管内治療4例)の最終梗塞体積(40.8±18.3cm^3)は予測梗塞体積(102.7±100.0cm^3)より有意に縮小していた。また将来の治療タイムウィンドウ延長の可能性を考慮し、発症6時間超(~18時間)の15例についても脳血流SPECTデータを収集した。Merciによる血栓回収を行った81歳女性について、本システムでの解析を試みたが、経過中くも膜下出血を合併し解析不能であった。 [平成24年度以降の計画] 保存加療例における脳血流閾値(対側比<64%)の精度向上を目指して症例蓄積を継続する。また、血管内治療例、6時間超の症例についても本システムの応用可能性について検討する。
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