研究概要 |
[研究の目的と意義]脳梗塞急性期治療戦略として血栓回収デバイス(2010年Merci、2011年Penumbra)による血行再建療法が加わったが、専門医によるカテーテル手技が必要であるためランダム化比較試験によって有効性を証明することは難しい。そこで本研究は脳血流SPECT所見から算出した予測病巣体積と最終病巣体積の比較による客観的な有効性評価システムを構築することを目的とした。 [平成24年度の実績]発症6時間以内の急性期脳梗塞27例(男性16名,年齢74.6±12.0歳,NIHSS中央値 19)を対象として、発症時脳血流閾値(対側比<64%)より算出した予測梗塞体積(Est)と治療後の最終梗塞体積(Real)とを比較し、本システムの妥当性を検証した。Estは、発症475±400分で撮影した99mTc-HMPAO SPECTデータを翌日のMRI画像とcoregistrationし、Fusion Viewer(日本メジフィジクス)を用いて実体積(cm3)として算出した。Realは、翌日のMRI FLAIR画像での高信号病変を実体積(cm3)として算出した。その結果、Real = 1.28 × Est -16.6, R2 0.67, P<0.0001という回帰式を得た。急性期の血行再建療法によって再開通が得られた3例は、回帰直線の90%信頼区間を超えた病巣縮小効果が確認された(症例1:128.0→27.9 cm3,症例2:165.6→118.8 cm3,症例3:72.0→8.6 cm3)。病巣縮小効果が大きいほど患者転帰は良好であった。 [研究成果と問題点]本システムを用いることで脳梗塞急性期治療の有効性を客観的に評価できる可能性が示された。SPECT検査に時間を要すること、解像度に限界があり小病巣についての評価が困難であることが課題である。
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