研究課題/領域番号 |
22590960
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
今井 富裕 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40231162)
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研究分担者 |
保月 隆良 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80464501)
津田 笑子 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (90464495)
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キーワード | 重症筋無力症 / 興奮収縮連関 / 咬筋 / 抗リアノジン受容体抗体 / タクロリムス |
研究概要 |
1.抗リアノジン(RyR)抗体による興奮収縮連関障害 重症筋無力症(myasthenia gravis : MG)26例を抗RyR抗体陽性群12例/陰性群14例に分け、ステロイドや免疫抑制剤(FK506,シクロスポリン)投与あるいは免疫グロブリン大量静注療法、血液浄化療法の治療内容にかかわらず、反復刺激試験の%decrementが正常な時のデータを解析した。前年度の研究から興奮収縮連関時間(excitation-contraction coupling time : ECCT)は興奮収縮連関だけではなく、シナプスでの伝達効率の変化や筋線維の病理学的変化にも影響を受けることが明らかになったが、本研究では、電気的シナプス接続、咬筋の複合筋活動電位、病期あるいはMG重症度に関して抗RyR陽性群/陰性群で有意差がない条件が設定された。このように純粋に興奮収縮連関障害を評価することができる条件設定においても、抗RyR抗体陰性群に対して抗RyR抗体陽性群で有意にECCTの延長がみられた。このことから抗RyR抗体はシナプスでの伝達障害や筋線維障害とは無関係に興奮収縮連関を障害すると考えられた。 2.FK506投与によるECCTの改善 FK506には本来の免疫抑制作用のほかに興奮収縮連関を促通する効果があると報告されている。この効果を実証するため、20例のMG患者においてFK506投与前後で、経時的に感圧シートを用いた咬筋力、反復刺激試験および咬筋ECCTの測定を行なった。咬筋の複合筋活動電位や反復刺激試験の結果はFK506投与前後で有意な変化を示さなかったが、ECCTは12例で投与後2週以内に、8例で投与後4週以内に有意な短縮を認めた。FK506投与後早期にみられる有意なECCTの短縮はFK506の興奮収縮連関促通作用を示していると考えられた。 以上の成果は平成23年度内に英文論文2編と和文論文(総説)1編にまとめられ、平成23年11月11日の国内学会シンポジウム(静岡)と同年11月16日の国際学会(マラケシュ、モロッコ)で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究目的にかかげていた「抗RyR抗体による興奮収縮連関障害」と「FK506による興奮収縮連関促通作用」をどちらも実証することができた。これらの研究成果は当初の予定を越え、英文論文2編と総説(和文)1編にまとめられ、国内学会だけではなく、国際学会でも発表するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度からの一連の研究で、1)MGの病態に興奮収縮連関障害が関与していること、2)興奮収縮連関障害は筋力低下と相関していること、3)興奮収縮連関に重要な役割をはたしているリアノジン受容体(RyR)に対する自己抗体(抗RyR抗体)が興奮収縮連関を障害すること、4)免疫抑制剤としてMG治療に用いられているFK506に興奮収縮連関促通作用があること、が明らかとなった。しかし、これらの実証に用いられた被検筋は咬筋であり、四肢の骨格筋で同様の結果が得られるかどうか不明である。また咬筋の検査には特殊な刺激電極を必要とするため、一般の臨床検査としては普及しづらいと考えられる。次年度は四肢筋を被検筋として、さらに簡便に興奮収縮連関障害を検出するための方法の開発に取り組むこと予定である。
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