TDP-43コンディショナルノックアウトマウスにおける血液-脊髄関門の変化
【目的】:ヒト孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脊髄では血液-脊髄関門(BSCB)が障害されているとの報告が散見される。運動ニューロンに特異的なTDP-43蛋白の脱落によって作成されたALSの動物モデルであるコンディショナルノックアウト(TDP CKO)マウスのBSCBを免疫組織学的、電顕的およびウエスタンブロットで観察し、BSCBに変化がみられるかどうかを検討する。【方法】:前発症期前期(20週、n=2)、前発症期後期(36週、n=2)、発症期前期(50週、n=2)、発症期後期(100週、n=2)のTDP CKOマウスおよび週齢を適合した野生型対照マウス(それぞれn=2)の脊髄を光顕および電顕で観察した。MAC-2、fibrinogen、claudin-5の抗体を用いて免疫組織学的に観察した。また、claudin-5、 occludinおよび ZO-1の抗体を用いて脊髄前角をウエスタンブロットで解析した(TDP CKOマウス、n=1、対照マウス、n=1)。【結果】:免疫組織学的にTDP CKOマウスでは発症前期から後期まで前角でのみMAC-2 とfibrinogen の免疫活性化がみられた。癒着帯蛋白を用いた免疫組織学的およびウエスタンブロットの解析では、TDP CKOマウスと対照マウスとの間で有意差はみられなかった。電顕では、TDP CKOマウスの発症前期でのみ内皮細胞、周皮細胞および血管周囲腔に空胞化あるいは浮腫状変化がみられたが、癒着帯はよく保たれていた。その他の病期では、BSCBは対照例同様よく保たれていた。【結論】:運動ニューロンに特異的なTDP-43 proteinの脱落により、TDP CKO マウスでは発症前期に一致して、BSCBの漏出あるいは透過性の亢進を伴う一過性かつ可逆性の傷害が起こることが示唆された。TDP CKO マウスにおけるBSCBの一過性障害がさらに同マウスの運動ニューロンの変性の促進に関与していると考えられる。
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