研究課題
【目的】進行性核上性麻痺(以下PSP)確定診断例を、PSP Richardson症候群(PSP-RS)、PSP parkinsonism(PSP-P)亜型に分類し、臨床・病理学的特徴を明らかにする。【対象】高齢者専門病院(A施設)連続半脳凍結820剖検例、精神・神経疾患専門病院(B施設)連続剖検944例中、PSPと確定診断した例。【方法】ホルマリン固定パラフィン包埋切片に対し、H.E.、K.B.染色に加え、ガリアス鍍銀染色、抗リン酸化タウ(AT8)、抗3/4リピートタウ抗体免疫染色を施行した。臨床症状について、後方視的に、病歴、画像、バイオマーカーの検討を行った。【結果】PSP確定診断例は、A施設、B施設でそれぞれ、17、22例、男女比は15:2、15:7、平均発症年齢は73.9、64.3歳、平均死亡年齢は80.3、72.3歳であった。亜型分類では、A施設でPSP-RS8例、PSP-P2例、B施設でPSP-RS14例で、PSP-Pはなかった。PSP-RSの平均年齢は73歳、PSP-Pは88.5歳であった。画像では、MRI矢状断での中脳被害/橋面積比の低値は、PSP-RSに比べ、PSP-Pの方が軽かった。18F- FDG PET、11C- CFT/Raclopride PET撮像例で、画像診断と病理診断は一致した。髄液中リン酸化タウは、PSP-RS2例で軽度上昇を認めた。一方PSP-RS中MIBG心筋シンチ低下例が2例あった。病理学的に、PSP-RSではPSP-Pと比べ、タウ病変の脳幹、小脳、新皮質への広がりが高度であった。PSP全体で、レビー小体の出現を27%に認め、年齢対照と比べ、高率であった。【結論】PSP-Pは、病理学的にタウ病変が軽く、レビー小体病理の合併頻度も高く、形態画像、MIBG心筋シンチとも、パーキンソン病と鑑別が困難な場合がある。多施設共同での、バイオマーカー、画像と神経病理との関係の究明が、今後の課題である。
2: おおむね順調に進展している
論文化までは至っていないが、臨床病理連関のデータも蓄積されている。また新規の剖検例も増えている。
神経病理学的に1);全例について、4Rタウアイソフォルム特異抗体による免疫染色でのtuft- shaped astrocyteと神経原線維変化の出現の有無を確認する。また2);1)で抽出された症例の一部に中脳黒質における直細管よりなる神経原線維変化の確認、前頭弁蓋皮質を用いた不溶画分のWestern blotによるPSP特有4Rタウ及びC末プロセスの確認は出来る限り行う。そしてPSPと神経病理学的に診断した群に対し、臨床病歴・画像を後方視的に検討する。そしてRichardson症候群、PSP-P、PSP-PAGF、PSP-PNFA、PSP-CBD、PSP-SD、PSP-SCAに分類を試み、臨床像・画像の特徴の抽出を行う。また神経病理学的に4Rタウオパチーの分布、他の変性型老化性変化の半定量解析による修飾の程度について検討し、臨床病理像を明瞭にする。次いでその所見を前方視的臨床縦断研究に適用し、これら亜型の臨床診断基準の有用性を検証する。さらに、連続剖検例を4Rタウ特異抗体によるスクリーニングを継続し、頻度を算出する。
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