研究課題
本研究課題の目的は、脂肪組織に浸潤するM2マクロファージ(M2Mf)による代謝調節機構の解明である。ジフテリアトキシンの投与によりM2Mfを生後欠失させることのできるマウス(M2Mf ablationマウス)の解析を昨年より開始している。これまで脂肪組織のM2Mfは代謝に好ましい作用を有すると報告されていたため、実験前にはM2Mfの欠失が代謝を悪化させると予想していた。しかし予想に反して、M2Mf ablationマウスでは耐糖能およびインスリン感受性が改善していた。その機序として、脂肪細胞が小型化し脂肪酸酸化が上昇するような遺伝子発現の変化を示すことなどを昨年までに報告してきた。本年はこの脂肪細胞が小型化しその数が増えること注目し、その機序について更に検討を進めた。内臓脂肪組織の間質分画(SVF)をSca1とLinをマーカーに前駆脂肪細胞、非前駆脂肪細胞、血球系細胞の3分画にわけ、遺伝子発現を検討した。その結果、3分画全てにおいて細胞増殖関連遺伝子の発現が上昇していることを見出した。前駆脂肪細胞の増殖分化に関わるHippo経路およびWnt経路の関与について現在検討を進めている。また一方で、脂肪組織マクロファージのM1/M2極性の決定における肥満脂肪組織内の低酸素シグナルの影響について検討を行った。低酸素は脂肪組織マクロファージをM1様の極性誘導すること、IL-4を用いてあらかじめM2Mfへ極性誘導しておくと低酸素による炎症反応が軽減することなどを見出し報告した(Diabetologia 2013, in print)。さらに、低酸素経路における重要な転写因子であるHIF-1aに注目し、解析を進めた。単球・マクロファージ特異的にHIF-1aを欠損するマウスの脂肪組織マクロファージはM2様であり、インスリン感受性が改善することを確認した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Diabetologia
巻: 56(6) ページ: 1403-12
Diabetes
巻: 61 ページ: 1199-1209
10.2337/db11-1182