研究課題/領域番号 |
22590972
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁弥 福井大学, 医学部, 助教 (20293417)
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研究分担者 |
高橋 貞夫 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (50303376)
小泉 勤 福井大学, ライフサイエンス支援センター, 准教授 (40126579)
弘瀬 雅教 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (40273081)
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キーワード | エネルギー代謝 / 脂肪毒性 / 線維化 / 脂肪滴 |
研究概要 |
糖尿病性心筋症は心筋細胞内に脂肪が蓄積して脂肪毒性から機能障害をきたす心合併症である。心筋に発現する脂肪滴関連蛋白ADRPの機能を解析するため、心筋特異的にADRPを過剰発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、ストレプトゾトシンにより糖尿病を誘発して3週間後に心筋を解析した。 電子顕微鏡による観察では、ADRP-Tgマウスの心筋は非糖尿病状態においても細胞内ミトコンドリア周囲に著明な脂肪滴の蓄積を認め、心筋トリグリセリド含量は野生型(Wt)マウスの8倍に達した。しかしながらストレプトゾトシンにより糖尿病化しても心収縮能の低下はWtマウスと同レベル(約20%)であった。Tgマウスの心筋は著明な脂肪蓄積にも拘わらずsirius-red染色による心筋間質の線維化はWtマウスと同程度であった。しかし心筋の新生コラーゲン含量はWtマウスで糖尿病化により80%増加したが、Tgマウスでは30%の増加に留まった。マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析では、Wtマウスの心筋では糖尿病化により1094個の遺伝子発現が2倍以上変化したが(増加567個、減少527個)、Tgマウスの心筋では1404個の遺伝子発現が変化した(増加784個、減少620個)。またTgでは糖尿病化してもHMG-CoAsynthase2などの脂肪酸反応遺伝子は変化せず、collagenは減少し、抗酸化蛋白metanothionein1と糖代謝酵素G6PDHが増加するなど心筋に保護的な遺伝子発現プロファイルを示した。 以上より心筋ADRPは、細胞内の過剰な脂肪酸を脂肪滴内に隔離して糖尿病性心筋症を軽減する可能性が示唆された。
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