研究課題/領域番号 |
22590977
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長嶋 一昭 京都大学, 医学研究科, 講師 (40324628)
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研究分担者 |
今村 博臣 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (20422545)
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キーワード | ATP / K_<ATP>チャネル / 糖代謝 |
研究概要 |
本申請研究は、細胞内ATP濃度を実測可能なKd値を有するATPプローブを作成し、膵β細胞など血糖値恒常性維持に重要な細胞に焦点を絞り、生理的条件下ならびに糖尿病状態での細胞内ATP濃度動態の実際を把握することと、更には上記条件下でのATP濃度変化により活性調節され、特にインスリン分泌に必須であるK_<ATP>チャネルの生理的役割の妥当性を検証することを主たる目的としている。本年度の研究は平成23年度交付申請研究実施計画に沿って進められ、研究成果は以下の通りである。 1)過去に作成済みの蛍光ATPプローブ(2種類)を基に膵β細胞で利用可能なより高いKd値を有する新規ATPプローブを作成し、膵β細胞株MIN6細胞およびマウス膵β細胞にリポフェクション法で導入し細胞内ATP濃度を直接測定した。 2)MIN6細胞に新規ATPプローブおよびFura2AMを導入し、各々、一波長励起二波長測光および二波長励起一波長測光を連続して行うことにより、単一生細胞における細胞内ATPおよび細胞内Ca^<2+>濃度変化の経時的同時測定を行った。 3)蛍光ATPプローブをMIN6細胞に導入し、グルコース反応性を有する細胞を選別し、ATeam導入stable細胞株(MIN6-ATeam)を複数系統確立した。 4)ATeam遺伝子導入(Tg)マウス作成し、得られた5系統のうち単離膵β細胞でのATeam発現およびグルコース反応性が良好な系統を3系統に絞込み、F3マウスまで計30匹以上のTgマウスを得た。最も反応性良好な系統を用いて膵島単離、膵島細胞分散、膵β細胞を初代培養し、生理的条件下での細胞内ATP濃度および細胞内Ca^<2+>濃度の経時的同時測定を行った。また、電気生理学的手法(パッチクランプ法)により、Tgマウス単離膵β細胞から、直接、K_<ATP>チャネル電流を経時的に測定した。 5)糖尿病状態での細胞内ATP濃度動態を解析するため、ATeam遺伝子導入マウスと糖尿病モデルマウスob/obマウスを交配し、膵β細胞内ATP濃度を生細胞のまま経時的に実測可能な糖尿病モデルマウスを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規ATPプローブによる膵β細胞株を用いた細胞内ATP濃度および細胞内Ca^<2+>濃度測定も達成し、より生理的条件下での検証実験に極めて有用なATeam遺伝子導入マウスを作成、得られた系統全ての単離膵β細胞での細胞内ATP濃度測定を実施し、非常に安定かつグルコース刺激に対する反応性が良好な系統を絞り込め、最も良好な系統の個体数を増やすことができており、その系統のマウスの単離膵β細胞の初代培養で、既に細胞内ATP濃度および細胞内Ca^<2+>濃度の同時測定も施行しており、さらにパッチクランプ法にて同細胞のK_<ATP>チャネル電流も確認できている。さらにATeam遺伝子導入マウスと糖尿病モデルマウスとの交配も進めており、当初の予定より進展がみられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、ATeam遺伝子導入マウスを用いて、多角的に細胞内ATP濃度動態、イオン濃度動態およびイオンチャネル電流を並列測定することにより、特にインスリン分泌に必須であるK_<ATP>チャネルの生理的条件下での役割の妥当性の検証を進めていく。さらに糖尿病状態での上記動態の変化を解析し、病態との関連について検討していく。
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