本年度の研究成果は以下の通りである。 1)蛍光ATPプローブを用いた生細胞での細胞内ATP濃度およびCa2+濃度変化の同時測定:分担研究者今村らが開発した高いKd値を有するATPプローブ(ATeam)を用いて膵β細胞株MIN6細胞およびマウス単離膵β細胞での生理的条件下での経時的ATP濃度変化を測定した。細胞内Ca2+濃度測定用蛍光プローブ(Fura2AM)併用による高グルコース刺激による膵β細胞内ATP濃度およびCa2+濃度の経時的変化を測定し、高グルコース刺激による膵β細胞内でのATP濃度およびCa2+濃度変化の相対的時間差および各々の細胞内濃度変化(オシレーション)の有無および発生機序を検討した(欧米学会誌に投稿中)。 2) ATeamの細胞内ATP濃度キャリブレーション:ATeamを導入した細胞株に薬剤誘発微小孔を作りATP濃度測定済外液と細胞内液を平衡化してレシオ測定を行い細胞内ATP濃度換算に利用可能なATP濃度-レシオ曲線の作成を行った。あわせて微細ガラス管による細胞内ATP標準液置換による細胞内ATP濃度キャリブレーションも行った。より精度が高いATP濃度-レシオ曲線作成を継続して進めている。 3) ATeam遺伝子導入(Tg)マウスの解析:ATeam遺伝子導入マウスを5系統作成し、各系統間でのATeam蛋白発現量および細胞内ATP濃度変化への反応性を評価し最適系統を選別した。本系統のヘテロTgマウス単離膵島および分離膵β細胞を用いて細胞内ATP濃度、KATPチャネル活性、細胞内Ca2+濃度の経時的動態の解析を進行中(論文投稿準備中)。 4) ATeam遺伝子導入糖尿病病態モデルマウスの作成:上記ATeam遺伝子導入(Tg)マウスと糖尿病モデルマウスを交配し、糖尿病状態での細胞内ATP濃度および細胞内Ca2+濃度変化動態等を解析進行中である。
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