当初の方法を用いて、アディポネクチンの結合蛋白質としてシスタチンCを同定し、培養血管内皮細胞を用いたバイオアッセイによりシスタチンCがアディポネクチンの血管保護作用を障害することを明らかにした。しかし、その後に各組織を用いて行ったウエストウエスタンブロットから同定した蛋白質は、それぞれのcDNAをタグ付きの発現ベクターに組み込み、アディポネクチンと共発現する系でいずれもアディポネクチンとの特異的な結合を確認できなかった。そこで抗体を変更し磁性ビーズを用いて、より特異的かつ強力に免疫沈降させる系を構築し直した。 本年度はこの系を用いて、電気泳動上で抗アディポネクチン抗体と対照イムノグロブリンとの間にコントラストのあるバンドの質量分析を行った。非還元状態での電気泳動において複合体を形成していると考えられる分子量のバンドから候補となる分子を決定し、候補分子のcDNAを順次タグ付きの発現ベクターに組み込んでアディポネクチンとの結合性を検討し、アディポネクチンと特異的な結合能を持つ膜蛋白質と分泌蛋白質を各1分子ずつ同定した。これらのcDNAに変異を導入してアディポネクチンとの結合部位を研究中である。並行してアディポネクチンと結合しない変異体を作成し、分泌蛋白質に関してはタグを用いとた精製によりアディポネクチンの血管保護作用への影響を、膜蛋白質に関してはアディポネクチンシグナルへの影響を研究中である。
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