研究概要 |
糖尿病等で惹起される酸化ストレスは心筋梗塞発症に重要な役割を担う。我々は、酸化ストレスに関連する5つの遺伝子多型に注目し、これらの遺伝子多型が心筋梗塞に及ぼす影響について検討した。 3819人の日本人2型糖尿病患者を対象に、酸化ストレスに関連する5つの機能的な遺伝子多型(glutamate-cysteine ligase modifier subunit (GCLM) C-588T, manganese superoxide dismutase (SOD2) Val16Ala, endothelial nitric oxide synthase (NOS3) G894T, NAD(P)H oxidase p22phox (CYBA) C242T, myeloperoxidase (MPO) G-463A)と心筋梗塞との関連を横断的に評価した。各多型は単独では心筋梗塞と有意な関連はなかったが、酸化ストレスを促進させるアレル(pro-oxidant allele)を多く持つ患者ほど心筋梗塞の有病率が高かった(p for trend = 0.018)。古典的危険因子を調整しても、保有するpro- oxidant alleleの総数が心筋梗塞の独立した説明因子であった(オッズ比=1.16, 95%CI 1.01-1.34, p=0.034)。 上記の結果から、2型糖尿病患者において、酸化ストレスに関連する5つの遺伝子多型の集積は、心筋梗塞と関連すること、心筋梗塞のリスク評価にはこれらの遺伝子多型の集積効果を評価すべきことの有用性が示唆された。 現在、上記対象者を前向きに追跡中であり、酸化ストレス関連多型と心血管イベント発症との関連を検討する予定であるが、中間解析の結果では、pro-oxidant alleleを多く持つ患者ほど冠動脈イベントの発症リスクが高いことが示唆されている。
|