日本人におけるSNP解析でgeneral control nondepressible 2(GCN2)のSNPと2型糖尿病に有意な相関があることが報告された。GCN2はアミノ酸の欠乏により活性化される分子であり、膵島でGCN2が強く発現していた。全身性GCN2ノックアウトマウス(GCN2^<-/->マウス)を作製し、代謝パラメーターおよび組織学的な解析を行い、対照マウスと比較した。また、siRNAを用いてGCN2をノックダウンしたラット膵β細胞株であるINS-1細胞を用いてインスリンシグナルの変化を検討した。GCN2^<-/->マウスは通常食下に、24週齢まで耐糖能や膵β細胞量の変化を示さなかった。次に、マウスを高脂肪食下に飼育したところ、24週齢でGCN2^<-/->マウスの耐糖能は有意に悪化していた。高脂肪食飼育下GCN2^<-/->マウスは対照と比較して強い脂肪肝を示したため、肝臓においてより強いインスリン抵抗性が存在する可能性が考えられたが、インスリン分泌量は低下しており、膵β細胞量は減少していた。高脂肪食飼育下GCN2^<-/->マウスにおける膵β細胞量減少のメカニズムを明らかにするため、INS-1細胞を用いて解析を行った。アミノ酸の一部を欠損させた条件下にGCN2ノックダウンINS-1細胞では、対照と比較し、ATF4の発現が低下していることが確認された。また、S6キナーゼやS6のリン酸化が増加するなどmTORC1シグナルが増強していることが確認された。さらに、IRS-2の発現、リン酸化Akt(308番目スレオニン残基、473番目セリン残基)やリン酸化GSK3βが低下するなどシンスリンシグナルが低下していた。 GCN2^<-/->マウスは高脂肪食飼育下に24週齢で膵β細胞量の減少を示し、INS-1細胞ではGCN2のノックダウンによりインスリンシグナルに変化が認められることが明らかとなった。mTORC1シグナルが慢性的に活性化することによるネガティブフィードバックが、GCN2ノックダウンINS-1細胞におけるインスリンシグナルの低下の一因であると考えられた。
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