本年度は既に7月17日から8月9日までの間、米国ロサンゼルス市において626名の日系米人医学調査を実施した。現地では対象者より広島大学倫理審査委員会で承認された研究内容に対する同意文書への署名を得た上で、詳細な問診とともに、身体計測、血圧測定、心電図、超音波検査による頚動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)を測定した。さらに管理栄養士による栄養摂取状況の聞き取り調査も行った。また問診にて糖尿病発症を指摘されていない対象者には全例75グラム経口ぶどう糖負荷試験(75gOGTT)を実施し、得られた血清はすべて凍結状態のまま日本へ空輸した。 以上の626名の対象者のうち75gOGTTを施行した者については負荷前、負荷後1時間、同2時間の血清において血糖値、インスリン値を測定すると同時に、空腹時血清では一般生化学検査に加えて、LDLコレステロール値、トリグリセライド値、HDLコレステロール値、総・高分子量アディポネクチン値、高感度CRP値、IL-6値の測定、および尿中イソプロスタン値の測定を実施した。現在、得られたデータの集計と相互関係に関する解析を進めている。 また、日系米人における動脈硬化促進メカニズムを解明するため、2007年ハワイ島で実施済みの医学調査を受診した日系米人のうち、一部の対象者(75gOGTTの結果で正常型と判定され、かつ脂質異常症治療薬を服用していない)30症例の血清を用いて、培養マクロファージからのコレステロール引き抜き能を指標としたコレステロール逆転送系の評価を開始した。現時点で終了している25症例での結果では、糖負荷前に比べて負荷後におけるコレステロール引き抜き能が有意に低下しており、コレステロール逆転送系に関わるトランスポーター(ABCA1、ABCG1、SR-B1等)発現の関与が示唆された。
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