研究課題
PI3キナーゼp85α欠損マウスでは、p50αの代償によると考えられる末梢(筋肉と脂肪細胞)でのインスリン感受性の亢進が認められ、低血糖を起こす(Terauchi Y et al.Nat Genet. 21, 1999)。また、最近に肝臓特異的にp85αを欠損させたマウスでは肝臓と末梢のインスリン感受性が亢進していることが示された(Taniguchi CM et al.Proc Natl Acad Sci USA.103, 2006)。我々は、全身でp85αを欠損させたマウスでの肝臓の糖代謝を検討し報告した(Aoki K et al.Am J Physiol Endocrinol Metab.296, 2009)。グルコースクランプ法では、p85α欠損マウスの末梢組織でのインスリン感受性は亢進していたが、肝糖新生は有意差がないもののむしろ亢進していた。p85α欠損マウスにおける肝糖新生酵素のG6Pase、PEPCKの遺伝子発現は野生型に比して上昇していた。また、p85α欠損マウスのインスリン情報伝達系のPI3キナーゼ活性やAktのリン酸化も野生型と比較して亢進していなかった。すなわち、末梢組織とは異なり、肝のインスリン感受性は亢進していなかった。この原因として、血中のカテコラミンとグルカゴン濃度の上昇が肝糖産生亢進に寄与していた可能性がある。そこで我々は、p85α欠損マウスと野生型マウスから初代培養肝細胞を作成し、糖新生を測定した。その結果、初代培養肝細胞において両群での糖新生に有意差は認められなかった。PI3キナーゼp85α欠損マウスでは、in vivoとin vitroとも肝臓のインスリン感受性は亢進していないことが判明した。
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Metabolism
巻: 60 ページ: 617-628
Diabetes
巻: 60 ページ: 1246-1257