研究概要 |
STOP-NIDDMやDECODE研究の結果から、慢性的な高血糖状態だけではなく、食後の一過性高血糖がすでに心血管イベントのリスクであることが判明している。さらに、私達は、食後高血糖の改善に対して、αグルコシダーゼ阻害薬の服薬コンプライアンス改善の観点から検討を行ってきた(Aoki K et al. Diabetes Res Clin Pract.83:e31-32.2009,Aoki K et al. Diabetes Obes Metab.10:970-972.2008,Aoki K et al.Endocr J.54:1009-1014.2007,Aoki K et al. Diabetes Res Clin Pract.78:30-33.2007)。そこで我々は、p85α欠損マウスの血管内皮初代培養細胞を作成し、食後の一過性高血糖状態をシャーレの中で作り、アポトーシスの発生をp85α欠損と野生型マウスで比較することが目的である。まず最初に、正常マウスのC57BL6マウスの血管内皮細胞を小林の方法(Kobayashi M et al.J Atheroscler Thromb.12:138-142,2005)によってマウスの大動脈から血管内皮細胞を単離・培養した。そして、培地のグルコース濃度を、(1)100mg/dL、(2)300mg/dL、(3)100と300mg/dL交互の3群に分けて培養し、caspase-3,bax,Bc1-2,Ba,Aktなどのアポトーシスのマーカーをウエスタンブロット法にて解析した。その結果、(1)(2)(3)群間で蛋白発現の有意差を認めなかった。一方、Rissoらは細胞株(HUVEC)を用い、高血糖条件の培地を維持した細胞に比較して、一過性の高血糖を反復させた細胞の方が、多くのアポトーシスが誘導されたと報告している(Risso A et al.Am J Physiol Endocrinol Metab. 281:E924-930,2001)。初代血管内皮細胞は、endothelial cell growth supplementsやFBSを含有する培地を用いて培養していため、培地の条件変化のみではアポトーシスが誘導されなかった可能性がある。今後、前述の成長因子などを含まない培地で、一定の分裂能が維持される条件を探索し、p85α欠損マウスの血管内皮初代培養細胞にて同様の検討を行う予定である。
|