研究概要 |
慢性的な高血糖状態だけではなく、食後の一過性高血糖がすでに心血管イベントのリスクであることが判明している。Rissoらは細胞株(HUVEC)を用い、高血糖条件の培地を維持した細胞に比較して、一過性の高血糖を反復させた細胞の方が、多くのアポトーシスが誘導されたと報告している(Risso A et al. Am J Physiol Endocrinol Metab.2001)。そこで我々は、マウスの血管内皮初代培養細胞を作成し、食後の一過性高血糖状態をシャーレの中で作り、アポトーシスの発生を検討した。平成23年度に、野生型マウスの血管内皮細胞を小林の方法(Kobayashi M et al. J Atheroscler Thromb. 2005)によってマウスの大動脈から血管内皮細胞を単離・培養した。そして、培地のグルコース濃度を、①100mg/dL、②300mg/dL、③100と300mg/dL交互の3群に分けて2週間培養し、caspase-3, bax, Bcl-2, Ba, Aktなどのアポトーシスのマーカーをウエスタンブロット法にて解析した。その結果、①②③群間で蛋白発現の有意差を認めなかった。 最近、窪田らが血管内皮特異的IRS2欠損マウスを用いて検討を行い、血管内皮細胞のインスリンシグナル障害は、インスリンの移行障害により骨格筋のインスリン抵抗性を発症することを報告した(Kubota T et al. Cell Metab. 2011)。そこで、PI3キナーゼの上流に存在するIRS2を全身で欠損させた(IRS2欠損)マウスより作成した血管内皮細胞で上記と同様の検討を行った。その結果、①②③群間でcaspase-3, bax, Bcl-2, Ba, Akt蛋白発現の有意差を認めなかった。現在、p85α欠損マウスの血管内皮細胞を作成し、①②③群間で同様の検討を行っている。
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