1型糖尿病の完治を目指すには、自己の膵β細胞の分化と自己免疫の制御の双方が不可欠である。本研究は、自己免疫の制御に、CXCR3というケモカイン受容体を発現した免疫制御性T細胞(Hybrid Treg)が 、1型糖尿病の発症を効率的に制御するかどうかを明らかにし、その分画中の膵島抗原特異的な細胞を同定することを目的とした。 1型糖尿病患者、もしくは、対象として、インスリン使用中の2型糖尿病患者より、インフォームドコンセントを取得し、末梢血リンパ球を採取した後、膵島関連自己抗原(GAD(グルタミン酸脱炭酸酵素)、各種インスリンペプチド、インスリン蛋白)および、対照として無関係の抗原(PPD)にて刺激し、ELISPOT法を用いて、その抗原特異的反応性を検討した。刺激時の抗原濃度は、5-10 μg/mlとし、24~48時間の培養を行った。GADでは明確な違いは認めなかったが、インスリンペプチドのうち、インスリンB鎖の10-24 HLVEALYLVCGERGFの部分を用いた場合に、1型糖尿病患者のうち、HLA DR9を保有する患者は、保有しない患者に比して、有為にIL-10産生性が低かった。さらに、同じHLA DR9を有していても、1型糖尿病患者は、2型糖尿病患者よりも有為にIL-10産生性が低かった。 Hybrid Tregの数については、2型糖尿病では、加齢とともに増加したが、1型糖尿病では、そのような現象は認めなかった。現在、Hybrid Tregの抗原特異性について、さらに詳細に検討中である。
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