研究課題/領域番号 |
22590997
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構香川小児病院 |
研究代表者 |
森谷 眞紀 独立行政法人国立病院機構香川小児病院, 臨床研究部, 小児ゲノム医療研究室長 (50301312)
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研究分担者 |
横田 一郎 独立行政法人国立病院機構香川小児病院, 臨床研究部, 臨床研究部長 (50253208)
板倉 光夫 徳島大学, 疾患ゲノム研究センター, 教授 (60134227)
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キーワード | 1型糖尿病 / 疾患感受性遺伝子 / 候補遺伝子 / 単一遺伝子 / 遺伝子変異 / 自己抗体 / 臨床情報 / 遺伝因子 |
研究概要 |
我国の1型糖尿病(TID)患者は一般人口の0.01-0.02%(欧米の1/10以下)を占め、発症後はインスリン治療を継続する必要があり、糖尿病発症前に発症を予知する必要がある。発症予知や進展予防のためにも早急な診断が急がれる。そのため、TID発症に関わる疾患関連遺伝子の解明が必須である。申請者らは、香川小児病院、他施設小児科を受診したTID患者、さらに、「小児インスリン治療研究会」が主体となって収集した5歳未満発症TID患者を対象に、糖尿病発症に関わる可能性をもつ複数の候補遺伝子解析を実施してきた。本年度の研究期間内に以下の知見を得た。 1)5歳未満発症、自己抗体陰性患者(type 1B型)のゲノムDNA 34サンプルおよび健常者100人を対象としてインスリン(INS)、KCNJ11遺伝子の解析を実施し、日本人における新規のミスセンス変異を4種、既知のミスセンス変異を1種(これらは健常人では同定されない疾患特異的な変異である可能性が高い)を同定し、若年発症のtype 1B型患者におけるINSやKCNJ11遺伝子のスクリーニングの重要性を見出した。さらに、本結果は、Pediatric Daibet(2012)に発表した。 2)INS遺伝子内に見出したミスセンス変異は、全てインスリン分子のS-S結合部位あるいはCペプチド切断部位にあり、インスリン分子の構造異常から分泌障害をきたし、膵β細胞死に至らせる可能性のある変異であることが示唆された。 3)INS貴伝子内に日本人で新規に見出したミスセンス変異は、ヒトを始め10種の種において十分に保存されており、重要な部位であることが確認された。 4)INS異常の最年長発症例は父親が1型糖尿病患者で、変異をもつ家族解析の重要性を示唆した。 今後は、HNF-1α遺伝子や他の候補遺伝子解析、変異の認められた家族における追加解析、5歳以上の年齢で発症したtype 1B型患者における同様の解析を行う必要がある。現在、これらの解析および変異の機能解析を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「小児インスリン治療研究会」が主体となって収集した、若年発症自己抗体陰性患者(type 1B型)患者における遺伝因子の解析を行い、第1報として英語論文を発表した。継続して、解析遺伝子の数、DNAサンプルの数を増やし解析を実施中で、第2報としての英語論文を作成中である。おおむね、実験計画通り進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、「小児インスリン治療研究会」が主体となって収集した5歳未満発症TID患者を対象に、1型糖尿病発症に関与する候補遺伝子の解析を実施したが、本年度の結果をさらに確実に結論づける為にも、今後は、さらにtype 1B型のサンプル数を増やし同様の解析を実施する。また、解析する候補遺伝子の数についても増やす。 変異をもつ家系においては、主治医との連絡を密接に行い、家族の同意の上で、その家系内の解析が可能となるように努める。さらに、見出した新規遺伝子変異と糖尿病発症との関連性について機能解析を実施する。
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