研究概要 |
我国の1型糖尿病患者は一般人口の0.01-0.02%を占め、発症後はインスリン治療を継続する必要があり、発症予知や進展予防のためにも早急な診断と治療法の開発が急がれる。 申請者らは、「小児インスリン治療研究会」が中心に収集した5歳未満発症、自己抗体陰性(1B型)患者のゲノムDNA 34サンプルの臨床情報データを基に、糖尿病発症に関わる候補遺伝子の遺伝学的解析を終了、早期発症1B型の症例中に、単一遺伝子異常による糖尿病が混在することを報告(INS遺伝子内に4種、KCNJ11遺伝子内に1種のミスセンス変異)し、早期発症1B型のINS 遺伝子のスクリーニングの重要性を見出した。本年度の研究期間内では、以下の知見を得た。 1)5歳以上~15歳未満において、INS遺伝子のB鎖内に1種のG32Sミスセンス変異(ヘテロ接合体)を同定した (1/32例, 3%)。KCNJ11遺伝子内には、患者特有の変異は認められなかった。5歳未満発症1B型では、高頻度(5/34例, 15%)でINS遺伝子のA鎖やB鎖内のS-S結合部位およびCペプチド切断部位にアミノ酸変異が存在することを同定したが、5歳以上発症1B型では、単一遺伝子異常による糖尿病の混在頻度は減少するが、INS遺伝子異常は低頻度でも存在することを確認した。この事から、1B型では、発症年齢にかかわらずINS遺伝子のスクリーニングの重要性が示唆された。 2) 5歳未満発症、1B型患者を対象とした解析成果として、Pediatric Daibet (2012)に英語論文を発表、さらに、5歳以上~15歳未満において同定した変異を投稿中である。また、糖尿病の国際学会 9th international Diabetes federation Western Pacific Region Congress にて、ポスター発表を行った。
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