研究課題/領域番号 |
22590998
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三好 秀明 北海道大学, 大学病院, 講師 (30360902)
|
研究分担者 |
永井 聡 北海道大学, 大学病院, 助教 (70507590)
|
キーワード | ペリリピン / 肥満 / 脂質代謝 / 脂肪細胞 / 代謝学 / 動脈硬化 |
研究概要 |
我々が作成した脂肪組織特異的ペリリピン過剰発現マススの白色脂肪組織内には褐色脂肪細胞が異所性に発現し(白色脂肪の褐色脂肪化)、エネルギー消費が亢進し肥満になりにくいマウスであった。3T3-L1培養脂肪細胞のペリリピンの発現量を増加させるだけで脂肪滴が劇的に縮小化することから、過剰ペリリピンによる脂肪萎縮は直接的作用でもあることが確認された。ペリリピンの増加によって同じ脂肪滴周囲蛋白であるFSP27が減少することで、褐色脂肪誘導化因子PGC1αの増加を認め脂肪組織内での褐色脂肪細胞への分化が亢進することが想定され、昨年、雑誌J Lipid ResとPLoSOneなどで発表した。今年は引き続きペリリピン過剰発現マウスの糖代謝改善効果にフォーカスをあて、脂肪細胞内と骨格筋内のAMPKのリン酸化がその要因であることを示し学会などで公表した。 また,動脈硬化粥腫内マクロファージ泡沫化細胞内でのペリリピンの役割を解明するために、市内協力施設から頸動脈剥離術後の切除プラーク検体65例の回収を終えた。同検体を用いて、また並行してヒト末梢血単球由来マクロファージの初代培養やヒト単球細胞のcell lineを用いて実験を進めている。マクロファージ脂肪滴貯留(泡沫化細胞形成)における機序と脂肪滴周囲蛋白の役割の解明にむけ、培養細胞に様々な刺激を加えたり、各脂肪滴周囲蛋白の発現量を変化させるなどして検討を行っているところである。また、切除プラーク検体について、症候性プラークと非症候性プラークに分けて解析をすすめ、現在はM1,M2マクロファージや炎症、線溶についてフォーカスをあてて解析を行い、その結果をまとめて論文を作成中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペリリピン過剰発現マウスを用いた検討については、今後動脈硬化マウスを用いての実験などは残っているが、最初に計画書で予定したものについての遂行はほぼ終えている。動脈硬化実験についても、解析に時間はかかりゆっくりではあるが進んできており、更なる検討を加えていきながらでてきた結果について、今年度中に学会や論文の形で報告を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
まずヒト頸動脈プラークを用いた症候性/非症候性プラークの実験について作成中の論文を完成させていく。今後は培養マクロファージについての研究を先行させて、その結果を踏まえてヒト頸動脈プラークの保存検体に戻っていく予定である。培養細胞ではペリリピンとADRPといったマクロファージ内の脂肪滴周囲蛋白の過剰発現実験をするために今年作成したアデノウイルスを用いていく。動脈硬化内で重要な役割を果たしていると考えられている、様々な炎症性サイトカインや分化誘導因子を用いた刺激実験を行っており、プラーク内で起こっている泡沫化、炎症、アポトーシスなどの一連のプラーク不安定化機構、そこにかかわる脂肪滴周囲蛋白を中心に検討を進めていく予定である。
|