我々が作成した脂肪組織特異的ペリリピン(PLIN1)過剰発現マススの白色脂肪は一部褐色化し、エネルギー消費亢進により肥満になりにくい痩せたマウスであった。培養脂肪細胞のPLIN1の発現量を増加させるだけで脂肪滴が劇的に縮小化することから、過剰PLIN1による脂肪萎縮は直接的作用でもあることが確認された。それら一連の表現型の機序解明に関する研究については、雑誌J Lipid ResとPLoS Oneなどで発表した。 また、動脈硬化粥腫内マクロファージ泡沫化細胞内でのPLIN1の役割を解明するために、市内協力施設から頸動脈剥離術後の切除プラーク検体65例を回収し、脳卒中を発症した34の症候性プラークと,31の非症候性プラークにわけて検討を行った。術前に行われた臨床検査や患者背景は両群に差を認めるものはなかったが、症候性プラーク内にはマクロファージの浸潤が著しく多く、そのほとんどがCD11c陽性のM1マクロファージであること、炎症性サイトカインや線溶系酵素が多く発現していることを明らかにした。反対に非症候群のプラークにはマクロファージの浸潤が少なく、浸潤しているマクロファージのほとんどがCD163やMR陽性のM2マクロファージであることを示し、雑誌J Stroke Cerebrovasc Disで発表した。さらにマクロファージ内の脂肪滴周囲に発現し、細胞内脂質代謝の制御に重要な役割を演じている蛋白であるPLIN1とPLIN2についての解析を行っている。非症候性プラークと比較し症候性プラークにはPLIN2の発現が著しく増加し、反対にPLIN1は非症候性にも症候性にも発現を認め大きなサイズの脂肪滴の周囲に発現していることを確認した。ヒト末梢血単球由来マクロファージの初代培養を用いて、脂肪滴周囲蛋白の変化による、マクロファージの炎症性変化、極性変化への影響について解析を進めている。
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