骨密度が相対的に高い2型糖尿病患者で骨折リスクが増加することや、ビスホスホネート薬投与後の非定型骨折発症リスク増加の可能性が示されたことなどから、骨粗鬆症の治療や骨折予防において骨密度の改善のみならず骨質の評価とその改善についても近年重要視されるようになっている。特に、糖尿病状態ではAdvanced glycation endproducts (AGEs)が上昇し、AGEsの中でも非生理的なコラーゲン架橋であるペントシジンが骨質悪化のsurrogate markerとして有用なのではないかと注目されている。我々は、このAGEsとその受容体RAGEに着目し、RAGE-ligandであるS100を添加した前骨芽細胞系細胞から得たConditioned Mediumが破骨細胞分化を誘導すること、ならびに骨芽細胞と破骨細胞の共培養系においてもS100刺激が破骨細胞分化を誘導することを示してきた。特に、骨芽細胞・破骨細胞それぞれ単独で培養した場合にはS100刺激は細胞増殖や細胞分化を抑制するものの、骨芽細胞と破骨細胞の共培養系においては同じS100刺激によって破骨細胞分化の指標であるTRAP活性やTRAP陽性多核破骨細胞数の増加が認められ、S100刺激は骨芽細胞からのシグナルを介して破骨細胞分化を誘導し骨脆弱性に寄与していると考えられた。我々は次に、骨芽細胞からのシグナルによって転写因子NFATc1を介する下流遺伝子発現がどのように変化するかをRNAシークエンスにより検討し、その結果、同じNFATc1下流遺伝子でも遺伝子毎にその発現増加時期が異なることが確認された。このことから、転写因子NFATc1の下流遺伝子各々の発現が様々な上流シグナルに応じて調節されている可能性が示唆された。
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