研究課題/領域番号 |
22591001
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
岩本 禎彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (10232711)
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研究分担者 |
中山 一大 自治医科大学, 医学部, 助教 (90433581)
宮下 洋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90301449)
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キーワード | 脂質異常症 / メタボリック症候群 / 遺伝子多型 / 遺伝子環境相互作用 / TRIB1 |
研究概要 |
自治医科大学健診センターにおいて健診受診者からインフォームド・コンセントを取得したのち、末梢血を、平成22年度までに約3000例収集した。研究に同意を得られた参加者からは、健診で得られる血液データや生活習慣のデータに加え、X線を用いない完全非侵襲型の測定器を用いて内臓脂肪の蓄積データを取得している。血清トリグリセリド(TG)レベルは、BMIよりも内臓脂肪レベルとより強く相関し、内臓脂肪蓄積が少ないにもかかわらず血清TGが著しい高値を示すグループ、ならびに内臓脂肪の過剰な蓄積を認めるにもかかわらず血清TGが低値を示すグループが存在することも明らかになり、各々に強力な遺伝因子の存在が示唆された。次世代シークエンサーを用いた大規模なリシークエンス解析を行った結果、著しい高TG血症を示すグループにはApoA1遺伝子クラスターとLPL遺伝子に低頻度SNPを持つ者が多いことが明らかになった。他民族における解析では、女子栄養大学の香川靖雄副学長、久留米大学医学部の神田芳郎教授、筑波大学大学院生命システム医学大橋順教授らとの共同研究を推進し、東アジア6集団(本州、沖縄、北京、ウランバートル、バンコック、パラオ)合計約2千人、(ガーナ、南アフリカ白人、南アフリカ黒人、スリランカ、バングラデシュ、サモア、ウイグル、中国北部、中国南部、チベット、韓国、ネパール、インドネシア)合計約1400人の遺伝子多型の頻度解析を行った。その結果、中央アジアの民族ではMLXIPL遺伝子多型のアレル頻度に大きな違いが認められた。遺伝子と環境要因(肉食)との相互作用を示唆している。また、欧米人におけるGWASで同定された脂質関連新規遺伝子TRIB1の機能的解析を行った結果、マウスにおけるその過剰発現は血清TG値と血糖値の低下をもたらすことが明らかになりそのメカニズムの解明は、新たな血清脂質レベル調節パスウェイとして期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GWASの日本人での大規模な検証と民族間の比較解析は多くの成果をもたらしたが、高頻度SNPでは説明しきれない血清脂質レベルの分散に関わる低頻度アレルを見出すことには成功したとは言い難い。このためには更なる大規模なリシークエンスが必要であり、予算の範囲を超えてしまうため断念したが、その代わり、脂質関連新規遺伝子TRIB1の機能的解析から、新規パスウェイの手がかりを見出すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、TRIB1の機能的解析(発現制御機構、分子間相互作用0)スクリーニング、マウス肝臓における過剰発現とノックダウンによる発現プロファイル解析、など)を進め、新たな血清脂質レベル調節機構の同定を目指す。集団遺伝解析については、内臓脂肪測定ゲノムバンクを用いたGWASを2012年度のゲノム支援公募に応募して、可能性を探ってみたい。
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