骨芽細胞系細胞株MC3T3-E1を用い、細胞培養液中のリン、およびカルシウムを変化させた際の活性酸素種(reactive oxygen species : ROS)産生を、nitroblue tetrazoliumアッセイにより評価した。その結果リン負荷でROS産生が亢進し、リンとCaの同時負荷でROS産生はより増加する傾向を示した。このリンによるROS産生は、NADPH oxidaseの阻害剤であるdiphenyl isodoniumで抑制されたことから、NADPH oxidaseを介するものと考えられた。またリン輸送阻害剤であるfoscarnetは、リンによるROS産生を抑制した。従って細胞内へのリンの輸送が、ROS産生に必要と考えられた。このROS産生が骨芽細胞分化に及ぼす影響を検討するため、MC3T3-E1をbone morphogenetic protein-2 (BMP-2)の存在下、および非存在下で培養し、アルカリフォスファターゼ活性に及ぼすリンの効果を検討した。その結果細胞外のリン濃度の上昇により、BMP-2の有無にかかわらず、培養期間の増加によるアルカリフォスファターゼ活性の上昇が抑制された。またこのアルカリフォスファターゼ活性の抑制は、foscarnetにより解除された。これらの結果から、リンは細胞内に輸送されることによりNADPH oxidaseを介してROS産生を促進し、骨芽細胞分化に抑制的に作用する可能性が明らかとなった。今後MC3T3-E1細胞に発現するNADPH oxidaseのタイプを検討すると共に、NADPH oxidaseの阻害が骨芽細胞分化に及ぼす効果についても検討する予定である。
|