骨系統疾患は骨・軟骨組織の成長障害により骨格異常を来たす先天性疾患の総称である。そのほとんどが単一遺伝子病と考えられているが、依然として病因や病態が不明なものも多い。骨系統疾患の中で最も頻度の高いものが軟骨無形成症(achondroplasia)であり、線維芽細胞増殖因子受容体III型(FGFR3)の恒常活性型遺伝子異常により内軟骨性骨化が障害され、四肢短縮型の小人症となる。申請者らのグループは、ナトリウム利尿ペプチドファミリーのメンバーであるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が内軟骨性骨化による骨の長軸方向への伸長を強く促進することを明らかにしてきた。さらに、軟骨無形成症のモデルマウスにCNPを投与することにより体長が野生型マウスとほぼ同等まで改善することも報告している。これらの研究成果より、申請者らは軟骨無形成症をはじめとする低身長を来す骨系統疾患患者へのCNPの臨床応用を計画している。本研究では、臨床応用に先立って、軟骨無形成症をはじめとする骨系統疾患患者よりiPS細胞を樹立し、CNPの有効性について評価する系を確立することを目的としている。平成22年度は、まず健常人由来iPS細胞を用いてin vitroにおける軟骨細胞への分化誘導系を確立させるため検討を行ってきた。他系統への分化誘導系でも知られているように、iPS細胞においてはクローン間、継代数、細胞のコンディションによっても分化能に差があることが知られている。また軟骨細胞への分化系においては長期間の3次元培養を必要とするため、細胞のviabilityが低下しやすい。検討を重ねた結果、分化誘導系は安定しつつあり、軟骨分化マーカーの発現も確認している。現在は軟骨細胞としての成熟度についてさらに検討を行っている。平成23年度はこの系を用いてiPS細胞から誘導した軟骨細胞におけるCNPの作用について検討していく予定である。
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