研究課題
我々はC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)及びその特異的受容体guanylyl cyclase-B (GC-B)が軟骨に存在し、内軟骨性骨化による骨の伸長を強く促進することを明らかにしてきた。一方、線維芽細胞増殖因子受容体III型(FGFR3)の恒常活性型遺伝子異常が原因である軟骨無形成症では、内軟骨性骨化が障害され、四肢短縮型の小人症となる。我々はこの軟骨無形成症のモデルマウスにCNPを投与することにより、体長が野生型マウスとほぼ同等まで改善することを報告してきた。これらのマウスの研究結果より、CNPは軟骨無形成症による低身長の新たな治療薬になる可能性があるが、患者由来の細胞でその効果を確認することが出来れば、臨床応用に向けてさらに大きな前進となる。そこで本研究では、軟骨無形成症患者由来iPS細胞を樹立し、iPS細胞から誘導した軟骨細胞におけるCNPの有効性についてin vitroでの評価系を確立することを目的としている。ヒトES細胞を用いた軟骨細胞への分化誘導法の報告は多数存在するが、方法は様々で、分化度についても報告によって一定していないのが現状である。ヒトiPS細胞に至ってはin vitroにおける軟骨細胞への分化誘導法に関する報告はほとんどない。このため、まず健常者由来の未分化iPS細胞から軟骨細胞へのinvitroでの安定した誘導系を確立する必要があった。検討を重ねた結果、iPS細胞から軟骨細胞への安定した誘導系を確立することに成功した。この研究成果は現在Stem Cells and Development誌に投稿中である(on revision)。この成果は本研究の遂行に必須であるだけでなく、今後のiPS細胞を用いた軟骨再生医療の基盤となり得るものである。さらに、この分化誘導系を用いて健常者由来iPS細胞にCNPを添加すると軟骨細胞への分化が促進される傾向があることも確認し、現在そのメカニズムについて検討を進めている。また、計画に従い、軟骨無形成症患者からのiPS細胞樹立も行った。疾患特異的iPS細胞が我々の分化誘導系においてどのような表現型を示すのか現在検討中である。
2: おおむね順調に進展している
iPS細胞から軟骨細胞への分化誘導系を確立し、本研究を遂行する上で最も基礎となる部分が達成出来ている。また医療機関との協力関係を構築し、患者検体を得るルートも確立し、実際に軟骨無形成症患者からのiPS細胞の樹立も行った。以上より概ね順調に進展していると考えられる。
樹立した軟骨無形成症患者由来iPS細胞を用いて、我々の軟骨細胞への分化誘導系でどのような表現型を示すのかを健常者由来iPS細胞と比較検討する。患者由来iPS細胞の表現型が確認できれば、この誘導系にCNPを添加することによりどのような変化が見られるのか検討する。具体的には組織学的解析や軟骨分化マーカーの発現、軟骨基質の測定などを行う予定である。
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