レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンであり、エネルギーバランスの改善を作用機序とする新たな治療薬として期待される。病態モデル動物としてマウスが多く用いられてきたが種族差が存在し、ヒトの代謝調節機構解明にはマウスを用いた研究のみでは不十分である。我々はN-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)による突然変異ラット群Kyoto University Rat Mutant Archive(KURMA)から効率的に標的遺伝子変異を選択、個体復元する方法を用いてob/obマウスのアミノ酸変異R105Xより上流である92番目のアミノ酸にQ→X変異を有するレプチン欠損ラット(F344Lep^<mkyo>/Lep^<mkyo>ラット)を開発した.このラットの血中レプチン濃度は測定感度以下でありのob/obマウスと同様にLep^<mkyo>/Lep^<mkyo>ラットは著明な肥満、インスリン抵抗性を伴う糖代謝異常、脂質代謝異常、脂肪肝を認めた。肝臓における遺伝子発現をマイクロアレイにより検討したところ、糖新生、解糖系、脂肪合成関連遺伝子発現の変動はマウスとラットで同じ傾向であること確認されたが、脂肪酸β酸化関連遺伝子発現はob/obマウスで亢進を認める一方ラットでは亢進が認められなかった。Lep^<mkyo>/Lep^<mkyo>ラットはレプチンの種族差を超えたエネルギー代謝調節作用を検討する上で有用なモデルであると考えられる。一方、生下時からの脂肪蓄積不全により糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などの代謝異常を認める先天性全身性脂肪萎縮症はレブチン補充療法により代謝異常の改善を認める疾患である。しかし、その主要病因遺伝子であるセイピン遺伝子の機能については未解明な点が多い。我々は同様の方法にて60番日のアミノ酸にL→X変異を有するセイピン欠損ラットを作成し、全身の白色脂肪細胞の著明な萎縮、褐色脂肪細胞の残存などを明らかにした。またセイピン欠損ラットから胎児線維芽細胞培養系を確立し、脂肪分化誘導を試み、脂肪分化障害の機序の解析をすすめている。
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