研究課題/領域番号 |
22591010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阿部 恵 京都大学, 医学研究科, 助教 (20568688)
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研究分担者 |
海老原 健 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70362514)
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キーワード | レプチン / 動物モデル / 糖尿病 / 遺伝子変異ラット / セイピン / PPARγ |
研究概要 |
(1)LEPmyo/LEPmyoラットの脂肪肝に対するチアゾリジン系薬物の作用の検討 ヒトの脂肪肝に対するチアゾリジン系薬物(TZD)投与の脂肪肝改善作用が報告されているがその機序については不明である。我々はN-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)による突然変異ラット群から得られたレプチン欠損ラット(F344Lep^<mkyo>/Lep^<mkyo>ラット)がob/obマウスとほぼ同等な強い脂肪肝を呈するにもかかわらず脂質合成や脂肪分化に重要な核内転写因子であるPPARγのアンタゴニストであるTZDのロシグリタゾン、ピオグリタゾン投与によりLep^<mkyo>/Lep^<mkyo>ラットでは脂肪肝の改善を認める一方、ob/obマウスでは脂肪肝の増悪が起こることを見出した。またob/obマウスではTZD投与前からすでに肝臓のPPARγの発現が上昇しており、TZD投与によりさらに増加するが、Lep^<mkyo>/Lep^<mkyo>ラットでは肝臓のPPARγの発現は低いままであること、TZD投与により筋肉内中性脂肪濃度、脂肪分布の変化がラットとマウスで異なることを明らかにした。このラットモデルはヒトの脂肪肝に対するTZD投与の効果に類似することから、我々はこのラットがレプチン投与可能なレプチン作用系解析に有用なモデルであることを明らかにした。(2)セイピン遺伝子変異ラットの開発、確立と代謝解析、中枢神経系の解析 我々は同様の方法にて先天性脂肪萎縮症の原因遺伝子のうち、我が国で最も頻度の高いセイピン遺伝子の20番目のアミノ酸にL→X変異を有するセイピン欠損ラットを作成し、全身の白色脂肪細胞の著明な萎縮、褐色脂肪細胞の残存などを明らかにした。セイピン欠損ラットの胎児線維芽細胞の脂肪細胞への分化誘導実験にて初期は脂肪分化能を有するものの後期において脂肪蓄積能が失われることを見出し、現在この解析を進めている。また、セイピン欠損ラットにおいて精巣萎縮および精子形成不全を認めること、空間作業記憶の低下を認めることを見出した。現在このモデルを用いてセイピンの機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでレプチン欠損ラットを用いて、レプチンの糖代謝調節機序の解析を行ってきた。また、同様の方法から先天性脂肪萎縮症の原因遺伝子のうち、我が国で最も頻度の高いセイピン遺伝子変異ラットの開発を行い、セイピンの機能解析を進め、ヒトの病態モデルとして有用であることを見出しているから。
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今後の研究の推進方策 |
セイピン遺伝子変異ラットから得られた胎児線維化細胞にみられる脂肪分化障害がセイピンの脂肪分解制御機構の破綻の関与を示唆する所見が得られている。今後、脂肪分化障害機序を明らかにし、脂肪分解制御機構を制御する方法をセイピン遺伝子変異ラットを用いて検討し、脂肪萎縮症における原因治療である脂肪蓄積能の回復を目指し、代謝異常の回復に関して検討を行う。さらに、同様の方法で最近得られた先天性脂肪萎縮症のもう一つの原因遺伝子であるPPARγ遺伝子変異ラットの解析をすすめる。
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