代謝機能においては特にヒトとマウスでは種族差が存在し、ヒトの代謝調節機構解明の用いる動物モデルとして複数の動物種を用いることが望ましい。遺伝子変異原性を有するENUを用いてこれまで我々はレプチン欠損Lep mkyo / Lep mkyoラット、セイピン欠損ラット、PPARγ遺伝子変異ラットを作成、解析を行ってきた。レプチン欠損Lep mkyo / Lep mkyoラットは著明な肥満、インスリン抵抗性を伴う糖代謝異常、脂質代謝異常、脂肪肝を認めた。遺伝的にレプチンを欠損するLep ob / Lep obマウスと比較して、また、レプチン投与によって慢性変化を来す前の比較的早期の肝臓の遺伝子発現をマイクロアレイにより比較することにより、レプチンによって発現変化を生じる遺伝子を8個同定した。これらの解析を現在すすめている。 さらに、セイピン欠損ラットにおいては全身の脂肪組織の著明な萎縮の他に、空間作業記憶の低下、精巣機能の低下を認めた。精子形成の段階の進行とともにセイピン遺伝子の発現が亢進し、精子形成におけるセイピン遺伝子の役割を明らかにした。また、ヒトのセイピン異常による先天性全身性脂肪萎縮症において表現型が認められているもののメカニズムが明らかにされていない点について、野生型ラットの脳におけるセイピン遺伝子の発現をIn situ hybridazationにて確認し、セイピン遺伝子欠損ラットの脳は野生型と比較して重量が少なく神経細胞数も減少していることを明らかにした。またセイピン欠損ラットから胎児線維芽細胞培養系を確立し、脂肪分化誘導を試み、脂肪分化障害の機序の解析を進めている。
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