研究概要 |
週齢8週の雄、野生型マウス(WT)とGIFノックアウトマウス(KO)に16週間、高脂肪食を与え,肥満を誘発し、その間体重を測定し、槍負荷試験(GTT),インスリン負荷試験(ITT)を行った。終了後に肝臓、皮下脂肪、精巣周囲脂肪組織を摘出し、mRNA発現量をreal time PCRで測定した。 1.体重(g)平均±標準誤差,開始時WT:22.5±0.42,KO:22.7±0.2;終了時WT:48±0.75,KO:46.7±1.2 2.GTT(グルコース1g/kg(体重)を腹腔内投与)血糖値(mg/dl)0分WT:409±26.3,KO:324±13.2;30分WT:533±26,KO:465±38.2;60分WT:452±63,KO:368±33;120分WT:218±24.4,KO:181±5.6 3.ITT(インスリン0.7/kg体重を腹腔内投与)血糖値(mg/dl)0分WT:250±16,KO:WT194±6.5;30分WT:193±11,KO:165±11:60分W:213±116,KO:165±9.7;120分WT:229±14,KO:180±14以上のようにGIFKOマウスはWTマウスに較べてインスリン感受性が高い事が示唆された。 4.mRNAの発現レベル:精巣周囲脂肪組織において、KOマウスはWTマウスに較べて,IL-4:15倍,IL-5:2.5倍,IL-13:2.5倍,OX40:5倍,GATA3:2倍の発現が認められた。これらの分子はTh2化したCD4T細胞より分泌されるサイトカインである。よって、この結果からGIFは脂肪組織に浸潤しているリンパ球のTh2化を制御している可能性が示唆された。 CD4T細胞から分泌されるGIFは60位のCにCysteineが結合することで(cysteinylation、modified GIF)生物活性をもち、リコンビナントGIFがマウスの血中IgEを抑制する事が知られている。筆者らはすでに、CD4T細胞から分泌されるmodifed GIFがCD4T細胞のTh2化を抑制し,IgE産生とアレルギー性気管支喘息の発症を抑制する事を見出している。さらに筆者らはCD4T細胞から分泌されるmodifed GIFがCD4T細胞のTh2化を抑制することによって脂肪組織の炎症性変化→リモデリングをコントロールするという全く新しい概念を提唱している。今回の結果より、GIFKOマウスでは脂肪組織に浸潤したリンパ球がTh2化し、Th2型サイトカインを分泌することにより、脂肪組織の炎症性変化を制御し、インスリン抵抗性を是正している可能性が示唆された。
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