研究課題
高脂肪食をラットに給餌すると、通常、食餌性の肥満が起こる。私たちは、高脂肪食を摂取させても肥満を呈さない高脂肪食耐性ラット(DRラット)が、約10%の割合で存在することを見出した。本研究は、その要因となる分子を網羅的遺伝子解析から検出し、その機能をin vivoおよびin vitroの両面から解析することで、肥満予防や治療のターゲット分子の同定につなげていくことを目的とする。今年度は、高脂肪食を摂取させたラットから、普通食摂取ラットの体重を下回る個体を検出し、それらのエネルギー代謝特性を検討した。結果として、DRラットは、高脂肪食を摂取したにもかかわらず、腸間膜脂肪重量が普通食摂取群とほぼ同じで、耐糖能やインスリン感受性が極めてよいことが明らかになった。また、行動量や酸素消費量、呼吸商、体温は、普通食群と差がなかった。さらに、DRラットの腸間膜脂肪組織から、RNAを抽出し、遺伝子発現パターンを網羅的に解析した。脂肪合成系の遺伝子変動に加え、DRラット7個体のうち3個体で、水・電解質代謝関連ペプチドおよびその受容体が、特異的に高発現していることが明らかになった。これらのDRラットの腸間膜組織を固定し、同ペプチドおよび受容体の抗体を用いて免疫染色を行ったところ、これらを産生する細胞は、マクロファージ系の細胞であることが判明した。また、DRラットの腸間膜脂肪組織を脂肪細胞分画と血管内皮や血球成分からなる細胞集団(SVF)に分け、DR特異的高発現分子のmRNA発現をRT-PCRで確認したところ、いずれの分子もSVFでのみ発現していることが明らかになった。次年度は、これらの結果を基に、脂肪細胞とマクロファージの共培養システムでの機能解析および遺伝子改変動物の作製を予定している。
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Endocrinology
巻: 151 ページ: 2200-2210
日本臨床
巻: 増刊号 ページ: 127-132
Obesity Research & Clinical Practice
巻: (印刷中)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/peptides/date/jp/