研究課題/領域番号 |
22591013
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
伊達 紫 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (70381100)
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キーワード | 肥満 / メタボリック症候群 / 高脂肪食耐性動物 / 脂肪細胞 / マクロファージ |
研究概要 |
高脂肪食耐性ラットの腸間膜脂肪組織における特異的遺伝子発現の解析から、本来、消化管において水・電解質代謝に機能する生理活性ペプチドとその受容体が高発現していることを見出した。また、両分子は腸間膜脂肪組織のマクロファージで産生されていることが免疫組織化学にて明らかになった。そこで、これらの分子と脂肪細胞との関連を検討するために、両分子を発現するマクロファージ細胞株をスクリーニングし、ラット腸間膜脂肪初代培養細胞との共培養系を確立した。同マクロファージと腸間膜脂肪細胞を共培養すると、脂肪滴の蓄積が明らかに抑制され、脂肪細胞での脂肪酸合成酵素や脂肪滴形成タンパクの発現が有意に低下していた。両分子をsiRNAにてノックダウンしたマクロファージを用いて、共培養を行った場合、脂肪滴の蓄積抑制は部分的に解除され、脂肪酸合成酵素や脂肪滴形成タンパクの低下も増加に転じた。これらの研究成果から、マクロファージに発現している水・電解質代謝関連ペプチドとその受容体は、脂肪細胞における脂肪的蓄積制御に機能していることが明らかになった。そこで、これらの分子のin vivoでの機能を解析するために、両分子をマクロファージ特異的に発現させたダブルトランスジェニックラットを作製し、代謝特性にかんする検討を行った。作製したダブルトランスジェニックラットは、予想通り、高脂肪食に耐性を示し、ワイルドタイプに比べ体重は少なく、また脂肪細胞のサイズも小さかった。エネルギー消費の検討では、熱産生には差を認めなかったが、酸素消費量および行動量は、高脂肪食を摂取したトランスジェニックラットで増加していた。これらの知見を踏まえ、24年度には、トランスジェニックラットの糖代謝、脂質代謝などの詳細な検討を行い、高脂肪食耐性ラットから検出した2つの特異的分子と脂肪細胞とのinteractionに関わる分子メカニズムを解明したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高脂肪食耐性ラットから検出した分子が、脂肪細胞の脂肪滴蓄積制御に重要な役割を担っていることを、in vitroの実験系を開発し明らかに出来た。また、作製したダブルトランスジェニックラットが高脂肪食に耐性を示し、その代謝特性も徐々に明らかに出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
高脂肪食耐性ラットの腸間膜マクロファージに特異的に高発現していた分子が、脂肪滴蓄積制御に機能していることをin vitroおよびin vivoの両方で明らかに出来た。このことを踏まえ、特異的発現分子のトランスジェニックラットの代謝機構や腸間膜マクロファージの特性をより詳細に解析し、肥満治療の標的分子の同定を目指す研究へと展開させたい。
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