研究課題/領域番号 |
22591016
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
池田 和博 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (30343461)
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キーワード | エストロゲン / 遺伝子 / 脳 / がん |
研究概要 |
エストロゲンは性行動をはじめ記憶・学習・情動などの脳機能に関与しているが、そのメカニズムの解明は十分ではない。一方、がんでは、エストロゲンは乳がんなどの増殖を促進することが判明している。本研究では、独自のエストロゲン応答遺伝子に加え、新規の脳におけるエストロゲン応答遺伝子を探索することで、脳とがんにおけるエストロゲンシグナルの共通性ならびに特異性を明らかにし、臨床への応用を探ることを目的とした。脳におけるエストロゲン応答遺伝子を探索するため、卵巣除去マウスにエストロゲンを投与し、海馬、視床下部、脳幹に分けてRNAを採取し、マイクロアレイ法にてエストロゲン応答遺伝子を網羅的に探索した。その結果、これらの3部位で特異的に発現上昇および発現減少を示す遺伝子が同定された。このエストロゲン応答遺伝子を検証するため、エストロゲン受容体(ERα)ノックアウトマウスの海馬、視床下部、脳幹を用いてマイクロアレイ法を行い、発現抑制されている遺伝子を探索した。その結果、海馬ではアドレノメデュリンレセプターとして機能することが知られているRAMP2が同定された。また、視床下部では乳がんで過剰発現していることが知られているGREB1が同定され、脳とがんに共通のエストロゲン応答遺伝子である可能性が示唆された。本研究で同定された新しいエストロゲン応答遺伝子は脳の機能に深く関与することが示唆された。また、エストロゲン応答遺伝子として独自に単離し、乳がんなどにおいて解析を行っているEfpおよびCOX7RPの脳における機能については明らかではない。これら遺伝子のノックアウトマウスを用いて一連の行動解析バッテリーによる検討を行い、不安行動、活動量、社会行動、協調運動、学習・記憶などとの解析を引き続き行った。以上の解析により、脳とがんにおける新たなエストロゲン応答遺伝子とその役割が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エストロゲン投与したマウスの脳を用いたエストロゲン応答遺伝子の探索が順調に進んでおり、がん細胞と共通性ならびに特異性を示す候補遺伝子を絞り込んでいる。また、独自のエストロゲン応答遺伝子に関してはノックアウトマウスを用いた行動解析を進めており、脳における作用を明らかにしつつある。以上の解析により、当初計画通りに解析は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、脳のエストロゲン応答遺伝子の探索と機能解析を行う。今後はエストロゲン受容体ノックアウトマウスも用いて、脳機能における新たなエストロゲン応答遺伝子の機能を解析する。この解析で注目している遺伝子にかんして乳がん、子宮がん、前立腺がんなどのがんにおける発現を検証し、過剰発現またはノックダウンの実験を行いがんにおける作用を明らかにする。独自の応答遺伝子についてはノックアウトマウスの解析を進め、脳とがんの2つの視点からその作用を明らかにする。
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