研究課題/領域番号 |
22591019
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
原田 信広 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00189705)
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研究分担者 |
石原 悟 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (00300723)
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キーワード | アロマターゼ / クロマチン構造 / ヒストン / メチル化 / アセチル化 / 組織特異的発現 / ポリコーム |
研究概要 |
本研究では、アロマターゼ遺伝子の組織特異的発現調節において観察されるエピジェネチック調節、特に多重エクソン1・多重プロモーター間でのクロマチン構造の変化、アセチル化やメチル化などによるピストン構造の動的変化、さらにアロマターゼ遺伝子の厳密な組織特異的発現を担保する各組織特異的プロモーターに存在する組織特異的エンハンサーの影響を抑制・遮断する制御機構に注目して解析を進めた。ヒトの肝細胞癌由来のHepG2細胞においては、CYP19遺伝子はIbとIcから発現する一方で、ヒト卵巣由来のKGN細胞では、最も下流のIcが用いられる。これらのプロモーター選択に対しエピジェネティクス・マーカーであるピストンの化学修飾の関与を明らかにするため、抗修飾ピストン抗体を用いたクロマチン免疫沈降法を行った。転写に対し正に作用するピストンH3のアセチル化は、HepG2細胞のIbプロモーターに観られたものの、他の転写活性のあるプロモーターに必ずしも観察されなかった。一方、転写に負に作用するピストンH3のN末端から27番目のリジンのトリメチル化は、HepG2細胞のIaプロモーターとKGN細胞のIa及びIbプロモーターに観られた。さらに、この化学修飾を指標に結合するポリコーム複合体の因子、Suz12の結合も観察された。これらのプロモーターがいずれも転写活性を持たないことから、ヒストンH3K27のトリメチル化を介したポリコーム複合体の結合が、CYP19遺伝子のプロモーターの選択的な不活性化に重要であると考えられた。実際、SEVENS法を用いたクロマチン構造の解析は、使われないこれらのプロモーターにおいてのみ凝集した構造を示しており、エピジェネティクス・マーカーによるクロマチン構造の違いが、CYP19遺伝子のプロモーター選択機構の分子基盤であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アロマターゼ遺伝子の多重プロモーター領域、約100kbに渡って、ピストンのアセチル化及びメチル化状態の動的変化について概要を把握する事が出来たし、SEVENS解析によりクロマチンの開閉状態との相関も明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
アロマターゼの組織特異的発現を確保する上で、組織特異的転写因子による転写誘導は重要であり、これまで多くの研究がなされてきたが、同時に使われない多重プロモーターには転写抑制するサイレンシングも重要である。この両者がうまく調節される事により組織特異的発現調節が可能になる。現在、組織特異的サイレンシング機構を明らかにするために、ポリコーム群タンパク質による組織特異的転写抑制を調べている。
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