研究概要 |
背景)活性型ビタミンDの分解・代謝には腎ではCYP24A1が、腸管・肝においてはCYP3A4等の薬物代謝酵素が主に関与している。オーファン核内受容体であるステロイド・ゼノバイオティク受容体(SXR)は、肝臓や腸管に発現しCYP3A4の転写調節をおこなっている。CYP3A4の酵素誘導をおこすリファンピシン(RFP)等の薬剤はSXRにリガンドとして結合し、CYP3A4の転写を活性化するが、長期連用は慢性的に1.25vitD3代謝を亢進し、薬剤性骨軟化症を誘発する。我々はこれまでビスフェノールA、フタル酸化合物、アセチルトリブチルクエン酸等の環境化学物質がSXRのリガンドとして作用する事を報告した。しかしながらビタミンD代謝や骨代謝への影響は不明である。一方1,25水酸化ビタミンD3 (1,25-D3)はビタミンD受容体(VDR)を介してCYP3A4やCYP24A1のみならずカルシウムチャネル(TRPV6)を誘導しビタミンD代謝とカルシウム吸収に関与している。 方法)本研究では環境化学物質や1,25-D3がSXRやVDRを介して1,25-D3の合成及び代謝酵素やTRPV6の遺伝子発現に影響を与えるかどうか、内因性にSXRとVDRを発現するヒト腸管細胞株(LS174T)と肝細胞株(HepaRG)を用いて検討した。 結果)コントロールのRFPは肝臓や腸管でSXRを介しCYP3A4の酵素誘導を引き起こす。特に腸管ではRFPは1,25-D3と協調してCYP3A4発現を増強した。一方、RFPは腸管で1,25-D3によるTRPV6発現増加を抑制した。 結論)SXRとVDRのクロストークによるビタミンD代謝酵素やカルシウム輸送体の発現調節が薬剤性骨軟化症の成因に関与する事が確認された。
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