研究概要 |
本研究は当研究室で同定した新規2型糖尿病感受性遺伝子KCNQ1の2型糖尿病発症に関わる分子機構の解明を目的とする。本年度はまず膵β細胞でのKCNQ1の機能を知るためにラット単離膵ラ氏島およびβ細胞を用いた検討を行った。ラット膵ラ氏島におけるKCNQ1およびβサブユニットの発現をreverse transcription PCRとウェスタンブロット法で解析した。単離膵ラ氏島ではKCNQ1の発現はmRNA、タンパクともに認められた。またβサブユニットはKCNE2の発現が確認できた。次にKCNQ1阻害剤(chromnol 293B)がインスリン分泌に及ぼす効果を検討した。ラット単離β細胞をchromanol 293B 100μMで1時間前処理し高グルコース(16.71mM)、Tolbutamide(300μM、高KCL (30 mM)存在下でのインスリン分泌をvehicle処理の細胞(コントロール)と比較検討した。Chromanol 293B処理細胞では低グルコース条件下(2.8mMではコントロールとインスリン分泌に差を認めなかったが、高グルコースおよびtolbutamide存在下のインスリン分泌はコントロールに比し増加を認めた(高グルコース386.0士74.5 vs.608.8±100.9,p<0.05、tolbutamide 465.3±65.5 vs.627.6±85.9 p<0.1)。KCIによるインスリン分泌には差は認めなかった。次にKCNQ1がGLP-1分泌に及ぼす効果を検討するためにGLP-1分泌細胞(NCI-H716細胞を用いて検討した。NCI-H716細胞ではKCNQIおよびKCNEI-5の発現が確認できた。Chromanol293B(100μm処理細胞ではmeathydrolysateおよびbethaneco1刺激時のGLP-1分泌がコントロール細胞に比し増加が認められた。IonomycineによるGLP-1分泌には差は認められなかった。以上よりKCNQIはインスリンおよびGLP-1分泌調節に関与する事が示唆された。KCNQ1過剰発現細胞ではインスリン分泌への効果が明らかでなかった事よりトランスジェニックマウスの作成は中止し次年度以降はさらに単離膵β細胞およびGLP-1分泌細胞での検討を引き続き行なう。
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