研究課題/領域番号 |
22591021
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
前田 士郎 独立行政法人理化学研究所, 内分泌・代謝疾患研究チーム, チームリーダー (50314159)
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キーワード | 2型糖尿病 / 膵β細胞 / インスリン分泌 / GLP-1分泌 / 遺伝子 |
研究概要 |
本研究は当研究室で同定した新規2型糖尿病感受性遺伝子KCNQ1の2型糖尿病発症に関わる分子機構の解明を目的とする。現在までの検討により、1)単離膵ラ氏島においてKCNQ1およびβサブユニットのKCNE2発現がmRNA、タンパクレベルで認められること、2)KCNQ1阻害剤(chromanol 293B)がラット単離β細胞において低グルコース条件下(2.8mM)、高KCL(30mM)存在下でのインスリン分泌には影響を及ぼさないが、高グルコースおよびtolbutamide存在下のインスリン分泌を有意に増加させること、3)KCNQ1およびKCNE1-5の発現がGLP-1分泌細胞(NCI-H716)においても認められること、4)KCNQ1阻害剤(chromanol 293B)がGLP-1分泌細胞(NCI-H716)においてmeat hydrolysateおよびbethanecol刺激時のGLP-1分泌を増加させることなどを明らかにした。そこで、本年度は、KCNQ1がインスリン分泌やGLP-1分泌に及ぼす分子機構を知る目的でKCNQ1阻害剤(chromanol 293B)の細胞内カルシウム濃度に及ぼす影響を検討した。Chromanol 293B(100μM)処理ラット単離膵β細胞では無処理の細胞に比し、tolbutamide添加時の細胞内カルシウム濃度上昇が有意に増加した。GLP-1分泌細胞(NCI-H716)においてもChromanol 293B(100μM)処理によりbethanecol添加時の細胞内カルシウム濃度上昇は、無処理の細胞に比し有意に高くなっていた。またKCNQ1阻害剤(chromanol 293B)は細胞内cAMP濃度の変化には影響を及ぼさなかった。以上よりKCNQ1はインスリンおよびGLP-1分泌を細胞内カルシウム濃度上昇を介して調節する事が示唆された。次年度以降はさらに単離膵β細胞およびGLP-1分泌細胞での検討を引き続き行なうとともに、2型糖尿病患者あるいは対照者における遺伝子型とインスリン分泌能との関連を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は新規2型糖尿病関連遺伝子KCNQ1がいかにして疾患感受性に関与するかを知ることを目的としている。現時点で、インスリンおよびGLP-1分泌調節にKCNQ1が関与すること、さらに細胞内カルシウム上昇に関与する分子機構に影響することなどを明らかにしており、目的の成果は得られていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
単離膵β細胞、GLP-1分泌細胞での検討を引き続き行う。また他の2型糖尿病感受性遺伝子についても同様の検討を行い、機序の違いを比較することでさらにKCNQ1の作用点を模索する。さらに、ヒトでの関連解析で2型糖尿病患者あるいは対照者における遺伝子型とインスリン分泌能との関連を検討し、ヒト2型糖尿病の病型の違いとKCNQ1の遺伝子型との関連を知ることでKCNQlの作用機構を推測する。
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