研究課題
[目的]2型糖尿病の病態の主要因である膵β細胞障害には、転写因子MafAの発現低下が関与している。そこで本研究計画では、in vivoでの膵β細胞におけるMafAの過剰発現による、膵β細胞障害の改善効果を明らかにした。[方法]テトラサイクリン制御系システムを利用して、膵β細胞特異的にMafAを任意の時期に発現させることができるトランスジェニック(TG)マウスを作製し、その効果を解析した。[結果]高グルコース濃度で長期培養したβ細胞株、ならびに糖尿病モデルマウスdb/dbの膵島では、それぞれ対照に比べMafAの発現は低下していたが、高脂肪食マウスの膵島では低下していなかった。ドキシサイクリンを投与したTGマウス膵臓において、TransgeneであるMycタグ付きMafAの膵β細胞特異的な蛋白発現を確認した。このシステムを利用して、以下に記載する、様々なレベルでβ細胞障害を認めるマウスの膵β細胞にMafAを発現させたところ、次のような結果を得た。MafAKOマウスにおいては、耐糖能異常が改善した。生後5週から13週齢まで高脂肪食を給餌したマウスでは、空腹時血糖の低下、耐糖能異常の改善を認めた。また、6~9週齢のdb/dbでは、空腹時血糖の低下傾向を認めた。以上より、生体の膵β細胞におけるMafAの発現が、膵β細胞の機能を改善し、糖尿病の治療的効果を生じうる事が示された。この改善効果の分子メカニズムを解明するため、MafA KOマウス膵島の遺伝子発現を網羅的に解析した。MafA KOマウス膵島では、ins1、ins2、slc2a2(Glut2)、slc30a8(ZnT8)、pcsk1、pcsk2、vdrの発現が低下しており、これらの分子を通じてβ細胞機能を改善している可能性が示唆された。一方、gck、kcnj11(Kir6.2)、abcc8(SUR1)の発現に変化は認められなかった。
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内分泌・糖尿病・代謝内科
巻: 36巻3号 ページ: 180-184
Acta Ophthalmol.
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10.1111/aos.12097.