研究概要 |
生理活性ペプチドの探索は様々な波及効果をもたらすが、従来の探索法で新たに見出されるペプチドの数は近年は激減している。我々は質量分析法を活用して、生理活性ペプチド候補分子を同定する新しいアプローチを提案し、実際に新しいペプチドの発見に成功している。本研究では、効率的な発見を可能とする分析基盤を確立するとともに、その手法を応用して新しい生理活性ペプチドneuroendocrine regulatory peptide(NERP)-3, -4を発見した。 ヒト甲状腺C細胞および膵ソマトスタチン産生細胞由来の神経内分泌腫瘍培養株を出発材料とした。正常の内分泌細胞と同様にペプチドホルモンを貯蔵する分泌顆粒を有し、脱分極で迅速に顆粒内容を細胞外に放出することに着目し、数分のエクソサイトーシス刺激後の培養上清中のペプチドを質量分析法で一斉分析した。同定された4桁に及ぶペプチド群のN端、C端配列の解析によって、前駆体タンパク質のプロセシング部位を同定した。 候補ペプチドの活性を簡便にスクリーニングする系として、カルシウム感受性発光タンパク質エクオリンのトランスジェニックマウスの組織を用いたex vivo アッセイ系を確立した。この系を用い、視床下部および下垂体を標的とする20ならびに 30アミノ酸から成る2つのペプチドを発見し、NERP-3, -4 と命名した。これらのペプチドはヒト・マウス・ラットで配列が同一である。共同研究によって、NERP-3は、視床下部切片に作用して、用量依存性に抗利尿ホルモン(AVP)の分泌を促進すること、視索上核にはNERP-3反応性のAVP産生細胞が存在することを明らかにした。
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