研究課題/領域番号 |
22591028
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内丸 薫 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (60251203)
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研究分担者 |
渡辺 信和 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (10334278)
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キーワード | ATL / FACS / CD7 / TSLC-1 / HTLV-1キャリア |
研究概要 |
HTLV-1キャリアからATLへの病態進行に伴うCD3/7FACS(HAS)はさらにキャリア症例の解析を追加し、病態によるパターンを確立し現在論文投稿中である。一部のキャリアがindolent ATLと同様のパターンを示し、これらのデータがもとになって、厚労科研「ATLの診療実態・指針の分析による診療体制の整備に関する研究」において病型分類の再検証が始まっている。CD7highとdimの分離をより明確にするため、ATLで高発現することが報告されているTSLC-1(CADM1)を加えた解析を行い、TSLC-1はCD7の発現の低下とともに高発現しており腫瘍化過程の早期から発現することを明らかにするとともに、これを用いてCD7high/dimをクリアに分離できることを示した。これら集団をソーティングし、東大新領域渡邉俊樹教授との共同研究で発現アレイ解析を行い、CD7highとdim/lowは明瞭に発現パターンが異なるがdimとlowは極めて似ており、特定のシグナル系が活性化している可能性が示唆された。東大先端研油谷浩幸教授との共同研究によりDNAメチル化の網羅的アレイ解析も進行中である。 急性型症例の解析を継続し、急性型症例の治療に伴うプロカウント法による定量的ATL細胞同定系を確立した(論文準備中)。治療経過に伴い、継時的にCD7low集団のTCR Vβレパトア解析を施行すると、CD7減少時でも大部分は発症時と同じクローンであるが、一部別クローンが検出された。このことは最終的なATLへの腫瘍化はCD7low集団の中で起こることを示唆しており、急性型症例のCD7low集団とindolent ATL症例のCD7low集団をアレイ解析で比較することで腫瘍化に寄与する異常を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画になかったTSLC-1を加えた解析系を開発し、その結果当初予測されたよりはるかに正確な解析が行えるようになった。また、CD7dim/low集団の解析についてもよりpureな解析系を導入したことにより明瞭なデータが得られるようになり(以前の系で行った発現アレイでは明瞭なデータを得られなかった)、HTLIV-1感染細胞腫瘍化初期における変化の手がかりが得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始年度に立てた研究目標はほぼ達成されており、CD7dim/low集団のcharacterizationも進みつつある。今後は、さらにこれらの集団のcharacterizationを進める。研究実績の概要に記載した急性型症例のCD7lowとindolent typeのCD7low集団のアレイ解析により腫瘍化に重要な遺伝子発現変化が見いだされれば、そこから新たな研究の展開が期待される。 ハイリスクキャリアとindolent ATLを一緒にした病態概念については、今後上記厚労科研「ATLの診療実態・指針の分析による診療体制の整備に関する研究」(塚崎班)との共同研究として解析を進めていく予定である。
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