造血器腫瘍の各種臨床検体を用いて、抗ROR1モノクローナル抗体によるフローサイトメトリーにより、ROR1の発現を検討した結果、慢性リンパ性白血病細胞のみならず、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、T細胞性前リンパ球性白血病患者検体等でもROR1の発現が認められた。一方正常リンパ球にはROR1発現が認められず、ROR1の発現誘導がこれらの腫瘍の癌化と関与する可能性が考えられる。 この発現誘導のメカニズムの解明の為、ROR1の転写調整について、レポーターアッセイにより検討した結果、転写直上にプロモーター活性があり、ROR1陽性のみならず、陰性細胞株においてもactiveに機能することが判明した。よって、ROR1の腫瘍に特異的な発現は他の部位から調節を受けていると考え、現在更なる解析を施行中である。 ROR1と結合する蛋白を解析する為、抗ROR1モノクローナル抗体を用いて、免疫沈降行ったところ、非特異的な蛋白の共沈降も認められた為、特異性を増す為、flag tag付きのROR1をROR1陽性細胞株にレトロウイルスベクターを用いて、遺伝子導入を行った。この細胞株を用いて、抗flag抗体と抗ROR1抗体の2段階の選択を行うことにより、ROR1結合蛋白の同定を行う予定である。 また、ROR1を癌関連抗原として、免疫療法の確立を目指し、K562細胞株を用いた、人工抗原提示細胞の作製を行った。今後ROR1及び、HLA-A分子の遺伝子導入、これを用いてT細胞をin vitroにて活性化し、抗ROR1特異的CTLの誘導を検討する。
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