造血器腫瘍の各種臨床検体等ではROR1の発現が認められる一方、正常リンパ球にはROR1発現が認められず、ROR1の発現誘導がこれらの腫瘍の癌化と関与する可能性が考えられる。この発現誘導のメカニズムの解明の為、ROR1の転写調整について、レポーターアッセイにより検討した結果、転写直上にプロモーター活性があり、ROR1陽性のみならず、陰性細胞株においてもactiveに機能することが判明した。そこで240kbにわたるイントロン1に注目し、転写調節領域の存在を検討した。BLASTにて検討すると、ラットとヒトROR1に非常に保存された領域が19箇所見つかり、それらの転写における影響を検討した所、4カ所においてはROR1陽性、陰性細胞ともに、エンハンサーとして働き、2カ所においては陽性細胞のみに、エンハンサーとして機能することが判明した。このエンハンサーへの転写因子への結合など検討予定である。 ROR1と結合する蛋白を解析する為、flag tag付きのROR1を細胞株にレトロウイルスベクターを用いて、遺伝子導入を行った。この細胞株を用いて、抗flag抗体とflagペプチド、抗ROR1抗体の2段階の選択を行うことにより、ROR1に加え、いくつかの蛋白の共沈降が認められ、このROR1結合蛋白の同定を施行中である。 また、ROR1を癌関連抗原として、免疫療法の確立を目指し、K562細胞株を用いた、人工抗原提示細胞の作製を行った。ここにROR1及び、HLA-A分子の遺伝子導入し、これを用いてT細胞をin vitroにて培養した所、T細胞の増殖が得られ、このT細胞において、ROR1遺伝子導入細胞に対しての細胞障害活性が認められた。現在更なる検討中である。
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