研究課題/領域番号 |
22591032
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山崎 宏人 金沢大学, 附属病院, 講師 (50361994)
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キーワード | 再生不良性貧血 / PNH型血球 |
研究概要 |
再生不良性貧血(AA)の治療の柱は「免疫抑制療法」と「同種骨髄移植」である。どちらの治療法を選択するかは、重症度と年齢を考慮して決定される。しかし、AAの発症機序は多様であることから、こうした選択基準では免疫病態が関与していない患者に対しても免疫抑制療法が施行されるリスクがある。発作性夜間ヘモグロビン尿症形質の血球(PNH型血球)は、骨髄不全における免疫病態を診断するための最も良いマーカーである。しかし、細胞の抗体処理の過程で傷んだ細胞は抗GPIアンカー型膜蛋白抗体との結合性が弱くなるため、フローサイトメトリーのドットグラム上では、真のPNH型血球と紛らわしいところに位置するようになる。このような偽のPNH型血球集団を真のPNH型血球と判別するためには多くの経験に基づいた主観的な判断が必要であった。そこで、微少なPNH型血球を客観的に定量できるようにするために、ほとんどすべてのGPIアンカー型膜蛋白質を認識することができるfluorescently labelled aerolysin (FLAER)とデジタル波形処理可能なフローサイトメーターを用いた新たなPNH型血球検出システムを確立した。ウマATGからウサギATGに変更されて以降、AAに対する免疫抑制療法の有効性については評価が分かれている。しかし、今回、ウサギATG+シクロスポリン療法を受けたstage 3以上のAA患者41例についてこのアッセイを用いて検討したところ、PNH型血球陽性例は25例、陰性例は16例で、それぞれの治療開始後6ヵ月時点でのPR以上の累積奏効率はPNH型血球陽性例で76%、陰性例で31%であった。免疫病態を示唆するPNH型血球陽性のAAに対象を絞れば、ウサギATGの治療成績は、従来のウマATGを用いた場合と比べて遜色がないことが示唆され、本アッセイが免疫病態の診断に有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「骨髄不全症候群および発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)疑い症例におけるグルコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー膜蛋白欠損(PNH型)血球の保有率とその意義を明らかにするための観察研究」に参加した多数例の検体を用いて、本検査法の有用性を検討した。更に、実際に免疫抑制療法を受けた患者検体を用いての検討も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度から国際共同試験である「重症再生不良性貧血患者に対するウサギ抗胸腺細胞グロブリンの前方視的ランダム化用量比較多施設共同研究」が開始される。本試験に参加する再生不良性貧血患者検体を用いて、今回用いたFLAER法によるPNH型血球検出の有無が免疫病態関与の予測につながるかどうかを前向きに検討する。
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